act.29…娯楽計画
岳人を見て思ったのはただ一つ――現金な奴ということ。
コイツは自腹でも食いもんを食べたかったらしい。
「やっりぃ!じゃあじゃあ、遊園地行こうぜっ!」
「……バイキングやのうて?」
「いいの!俺、蝶とこないだ約束したもん、なぁー?」
『え?あ、うん!』
「遊園地、ね。」
「そして、バイキングで食うはずだったケーキの埋め合わせは焼き芋で許してやる!」
「や、焼き芋?」
岳人のはちゃめちゃな予定。
しかし、続けて言われた言葉を聞き、なにも言えなくなった。
「これは失点した二人が悪い!」
「「……………」」
「だから、明日は遊園地、明後日は焼き芋パーティ!焼き芋用の芋は跡部が用意しろよ?夕方にやって、バーベキューして、花火して、解散!」
『…なんか楽しそう!』
まさに鶴の一声。
俺たちは岳人の予定に合わせ、行動することになった。
有無を言わさないタイミングだった。
「あーすっげー楽しみー!」
機嫌を取り戻したのか、ピョンピョン飛び跳ねる岳人。
俺はいつも、そんな強引で子供くさい岳人に勝てないのだった。
よく考えれば悪くはない計画だった。
「じゃあ、明日8時に跡部んちに集合な?」
「はいはい、支度して待っててやるぜ。」
「意外に早く実現したな、蝶?」
『そうだね。』
満足げに笑いながら分かれ道で岳人は俺たちに手を振りながら走り去っていく。
「じゃあ、そういうことで。」
「あぁ、」
『また明日。』
仁王も岳人に続いて分かれ道を歩いていく。
すでに出来た距離を埋めるわけでもなく、仁王は自分のペースで岳人を目指し歩いた。
足の長さが違うから心配はいらない。
間もなく岳人に仁王が追いついていた。
その二人を見て、蓬莱がポツリと言葉をこぼした。
『岳人には勝てる気がしないよね?』
「昔っからだ。」
『なんか憎めないんでしょ?』
「そうそう、あまりにガキくさくてな。」
『飛び跳ねちゃって可愛い。』
未だに飛び跳ねている岳人、そしてそれに合わせるように隣で飛び跳ねているこもも。
見ていて飽きない、というのか?
アイツにはいつも笑っててほしいと思うんだ。
『ところで、顔……大丈夫だった?』
「あん?」
『びっくりしちゃった。顔面にバコンッて……』
「うるせ!あんなこと人生において初めてだ!」
『初めて顔面にあたったの?』
貴重なシーンをごちそうさまです、と悪戯っぽく笑いながらそう付け加えた。
俺は蓬莱にも勝てる気がしないぜ。
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