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act.28…誰のせい?


この俺――跡部財閥の跡継ぎが顔面でボールを受けるなんて信じられない。

というより、女に気を取られてましたなんて格好悪い。


「跡部、平気かいな。」

「俺様の美しい顔になんてことしてくれやがる忍足!ああん!?」

「はは、堪忍や。」


忍足の胸ぐらを掴んで文句を言うがハッとして忍足から手を離す。

怒るべきなのは忍足に対してだけじゃない。

俺はこももの首根っこを掴んで睨んだ。


「(ちょっとなによ〜?)」

「キャンキャンわめくな。俺の顔にボールが当たったのは元と言えばおまえのせいだ!」

「(八つ当たりはみっともないんだから!)」


ツンとそっぽを向いたこももに苛立ちを隠しきれなかった。

犬を相手に俺が怒るなんてどうかしてるかもしれないがこの時ばかりはこももの言葉がわかったんだ。

それを見た仁王が慌ててこももを奪い取った。


「……はいはい、悪かったから。こももには良く言い聞かせておきますんで。」

「たく、……で、なんで蓬莱がいんだよ?」


蓬莱に話しかけようとしたがすでに彼女は人に埋もれていた。

サインが欲しい、握手してくれ、写真撮らせろなどと言われている。


「おいコラ。」

「お、跡部が進んでった。」

「なんやの?跡部は米倉蓬莱と知り合いなん?」

「いや…かくかく然々で、」

「つれないわ、岳人。なんで教えてくれへんの?」

「いや…だから…かくかく然々で。」


ヤキモチ、いやヤキモチくらい妬くだろう。

好きな女が男どもに言い寄られてんだ、気が気でない。


「蓬莱!」

『け、景吾。』

「なにしてんだよ、蓬莱。来い、帰るぞ!」

『だって学校…』

「いんだよ。」


蓬莱を無理矢理引っ張り、人をかき分けて廊下まで来た。

後ろからこももを抱いた仁王とションボリした岳人が歩いてきた。

とても学校どころではない。


『散歩…ていうよりランニング中にこももに会って、持ってた鞄を奪われたの。…それでそのまま学校に。捕まえようとしたの!』


必死に訴え来た蓬莱が可愛く見えた。すると、もうなにも言えなくなる。

惚れた女には弱いな。


「なら、それはこももが悪い。」

「(ちょ、人のせいにするわけ!?)」


会話を聞いていたこももは軽く唸りながら俺に吠える。

アイツが文句を言ってることはわかる。


「(誰の
おかげで蓬莱と会えたと思うの?それはあたし!!)」

「こもも落ち着きんしゃい?おまえがいくら言うてもアイツらには聞こえんのじゃ。」

「(だって……)」

「文句なら俺が聞いちゃる。」


ブツブツと独り言のように言う仁王はシカトしたところで、岳人だけは無視出来なかった。


『あ、あの…岳人はどうしたの?』

「アイツ、優勝逃したからな。優勝グループに与えられるあるはずのホテルのバイキングに行けなかったから落ち込んでるだけだ。」

『……岳人、ごめんね?あたしが「蝶のせいじゃねぇし。」


岳人はそう言ったが、悲しさが明らかに顔に滲み出ている。

よほど行きたかったのだろう。


「わかった岳人、明日は付き合っちゃるから。」


仁王が気を利かせてそう言った次の瞬間、岳人の顔が輝いていた。

本当に岳人は仁王が好きなんだな、と感じた。

それと同時に今まで可愛がってきた忍足が哀れに思えた。

子供を掻っ攫われたみたいな。





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