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act.23…後輩との再会


「……先輩?」


先輩と呼ばれ、蓬莱は自覚もなく振り返ると懐かしい顔に表情が緩む。

それは自分を慕った後輩。


『うそ、佳梨!?』

「やっぱり蓬莱先輩だ!」


鳳佳梨。

俺の後輩、鳳長太郎の従兄弟で身長が190センチを越える長身の男だ。

佳梨と蓬莱は栄祥学園の先輩後輩の関係でお互いテニス繋がりで仲が良かったと聞いている。


「こっちに来てるなら会いに来てくださいよ!」

『ごめんね、佳梨。』

「にしても久しぶりですね。元気そうで安心しました。」

『佳梨もね。』


それから二人は時間の経過に気づきもせず、軽い世間話をしていたそうだ。

テニスのこと、昔の話、アメリカでの生活のことなどだ。

しばらくして、蓬莱がある音に気付いた。


『佳梨、なんか鳴ってない?』

「え?あ、携帯だ。すいません。」

『早くしないと切れちゃうよ?』

「はい。もしも―――…なんだ仁王くん?」


彼が電話に出たことで蓬莱はようやく周りの暗さに気づいた。

佳梨が電話を切ると彼も周りの様子をようやく把握した。


「先輩すいません。こんな時間まで……送っていきますよ?」


下心か親切からかはわからない。

ああいう人がいいヤツってのはなに考えてるかわからないもんだ。


『いいよ、近いし。電話の相手、雅治だったんでしょ?』

「え?あ、仁王くんを知ってるんですか?」

『うん、友達なの。』


きっと驚いただろう。

5つも下の仁王と知り合うのに蓬莱と接点が一つしかないからだ。

栄祥学園テニス部。


「へ〜?いつのまに……あ、日本にあとどれくらいいるんですか?」

『1ヶ月滞在予定だけど。早まるかもしれないし、それはわからない。』

「そうなんですか。話したいこといっぱいあるんですよ!時間ある時にまた会えますか?」

『うん、いいよ。』

「やった!じゃあ、また!」


佳梨は約束を交わすと喜んで帰っていったらしい。



一方、俺は蓬莱の帰りがあまりに遅いため、心配して外でずっと待っていた。

肌寒いと身をさすりながら、いつ帰るかわからない蓬莱を待っている俺はただのバカだろうか?

でも蓬莱が心配だったから、苦にはならない。


『景吾こんなところでなにしてるの!?』

「なんでもねぇよ。」


帰宅した蓬莱に驚かれた。

まさか“待ってた”なんてストーカーじみたこと言えなくて誤魔化すしか選択肢はなかった。

しかし、蓬莱にそんな誤魔化しが通用するわけがない。


『もしかして…待っててくれた?』


ほらな、すべてを見透かされてるようでちょっと怖い。

仁王みたいだ。


「だったらなんだよ。」

『ありがとう!』

「……どういたしまして、」


素直になれず、ムスッとして言ったのに蓬莱はどこか嬉しそうに笑っていた。

俺が待っていた間、蓬莱がどこでなにをしていたかは気にしなかった。

だが、気にすべきだったんだ。



*



翌日、佳梨と蓬莱がまたも会っていたことなんて知る余地もなかった。

本人はなに食わぬ顔で過ごしていたし、どこもおかしいところはなかった。

二人で食事をして、テレビを見て、どうでもいい話をしてふつうに過ごしていたのだ。


「へぇ、あの跡部財閥の景吾くんちに泊まってるんだ?」

『うん。お金もかなり浮いたから助かってるんだけどね。』

「言ってくれればうちも空いてたんですよ?」

『景吾に言われただけじゃなくて、雅治にも勧められたから。』

「信じられない。俺は仁王くんからなにも聞いてなかったんですよ?」

『え?てっきり話してるんだと思った。なんか仲良いみたいだから。』

「(跡部くん、か……仁王くんの裏切り者め。)」


俺が佳梨と言う名のライバル出現を悟ったのは二日後の夕方だった。





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