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act.22…平和の終わり


蓬莱は変わるように努力すれば認めてくれる人が絶対にいる、と励ましてくれた。

優しいのな。


「蓬莱なら認めるか?」


聞きたいのは彼女の返事一点のみ。

参考までに聞きたい、と付け加えたのは自分の弱さと自信に欠けていたからだ。


『複数の女の子と絡む姿をまだ見てないけど私は信じてる。景吾はそういう人じゃないって。だから信用して、泊めてもらってるの。』


蓬莱は微笑みながらそう言ってくれた。

安心した。

さらに言えば、女に信用されたことなんてなかったから嬉しかった。

今までは騙して欲を満たし、相手を捨てて姿を眩ましてきた。

信用されたくてもされない状況を自分で作り上げていたのだから仕方ないが。


『私はいつだって、景吾の心の中を探るの。本当にそうなのかな?とか、本当はどう思ってるんだろう?って…』

「それでわかるのか?」

『わかるよ。だって、ほっぺに本音が書いてあるんだもん。』


そう言われ、思わず自分の頬を手で覆いい隠した。

人の感情を汲み取るのが自分は得意だったが頬に書いてあるのは見たことがない。

蓬莱は本当になんでもできる。


『正直でいてくれたほうが私は嬉しいんだけどね?』

「……なんでだ?」

『だって、私も景吾に対して素直になれるもん。』


少し照れてハニカミながらそう言った蓬莱を見て、胸がキュッと縮まった感覚に陥った。

胸が苦しくなると同時に無性に嬉しくなる。





そんな幸せな日がずっと続くと平和ボケしたみたいに思っていた。

だが、平和な日々が一転してしまう出来事が起きたのだ。

それを俺が知ったのはあとのことだった。



*



翌日、学校へ行っていた俺が帰ると蓬莱は家にいなかった。

中村に聞けば、散歩に出掛けたという。

だから、帰りを待っていようと思ったんだが…それが間違いだったのかもしれない。


『(夕方はかなり肌寒いな。)』


彼女は宛もなくフラフラと気が向くままに歩き、自分が気がついた時には幼い頃、母とよく来た公園にいたという。


「明良ちゃーん、ごはんよー!」

「ママぁ!これをおかたし(※お片付け)したらいくよー!」

『(……お母さん、か……)』


公園で遊んでいた明良、と呼ばれる子供の母親が迎えに来ると自分の持ち物を持ち、嬉しそうに母親の元へ走っていく。

そして、子供の足並みに揃え、二人はゆっくりと帰っていった。


その二人をどこか羨ましそうに見ている蓬莱がいたそうだ。

それを見ていたアイツの話だと――。





あきゅろす。
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