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act.18…ひとつ前進


蓬莱が家に泊まることになり、俺としては常に一緒にいられるから嬉しかったが彼女の本心が気になるところだ。

果たして、うちに滞在することを嫌がっていないだろうか。


「俺、風呂に入ってくる〜」

「岳人、背中流し忘れんなよ?おまえいつも背中に泡つけてんだよ。」

「大丈夫だって!」


岳人が風呂場にダッシュする前に俺と仁王の腕をしっかり掴んだ。

嫌な予感がした。

ニッコリ笑ってこっちを見ているからだ。


「んじゃ、一緒に入ろうぜ!」

「はぁ!?ひとりで入りやがれ!なんで俺が「はいはい、俺が一緒に入っちゃるから。」

「やーだぁ!跡部も一緒が良いー!」


仁王がぎゃあぎゃあ騒ぐ岳人を抱(だ)き抱(かか)え、風呂場へ姿を消した。

アイツ、最近幼少化してるように見えるのは気のせいか?


『お風呂一緒に入れる仲なんだね?』

「え、あ…」

『広いお風呂だから温泉みたいでいいよね。』

「仲良くても岳人んちみたいな狭い風呂にみんなで入ったりしねぇーよ。」


しばらくして、お風呂場から聞こえてくる叫び声(たぶん湯舟に投げ込まれた岳人のもの)を聞いて蓬莱は楽しそうに笑った。


『私もそんな友達がいればいいのになぁ〜…』

「友達でも、俺は残念ながら男だ。」

『さすがにちょっとね?』


控えめに笑う蓬莱を見て頬が緩む。

その様子を見ていた中村は俺の耳元で微かに囁いた。

本当に残念ですね、と。


「%¥□◎#℃!」

『?』

「蓬莱様、お部屋の準備が整いました。」

『あ、ありがとうございます。』

「申し遅れました。私、跡部家に代々仕えております中村、中村ユエと申し上げます。主なお仕事は景吾ぼっちゃまのワガママを聞き、教育することです。」

「バカ抜かすな!!」

「つまり景吾ぼっちゃま専属の使用人でございます。なにかありましたら中村になんでもおっしゃってください。」

『はい。』

「では、お部屋に案内いたします。」


崩れたキャラの一面を見せることなく自己紹介を終えた中村は蓬莱を連れて歩いていく。

やたら不安に思い、ついていくことにした。


「こちらはトイレでございます。そして、こちらが風呂場になります。入浴の際にお申し付けいただければ、湯船にお湯をお入れしますので。」

『はい。』


いつもこう丁寧ならいいのに、と思う。

うちにくる客人は気心知れた相手だからいいが、もう少し女性らしさを身につけてほしいもんだ。

そう思った矢先のこと。


「景吾ぼっちゃまは外でお待ちください!ここはレディのお部屋ですからね!」


バンッと部屋の扉を閉められ、俺は廊下に取り残されてしまった。

そういうところはチャッカリしてやがる。


『ご親切に感謝します。』

「とんでもございませんよ。景吾ぼっちゃまの女性のお客様は初めてですから、少し気合いが入ってしまって…お恥ずかしいです。」

『初めてですか?』

「はい、蓬莱様が初めてです。日々女性を連れて歩かれていましたが自宅には……恐らく、蓬莱様が最初で最後になるでしょう。」

『え?』

「いえ、何でもございません。蓬莱様に会って景吾ぼっちゃまは変わられました。すべての女性との関係を絶たれたそうで、ナンパもやめたみたいです。蓬莱様の一言がよほど効いたのでしょう。」

『……私はなにも。あの…聞いて良いですか?なぜ、彼は私に優しくしてくださるんでしょうか?』

「恐らく、今までにお会いしたことがないタイプの女性だからでしょう。つまり、あなたとあなたの優しさに惹かれているからだと思います。」


室内は防音されていて、中の会話は俺の耳には届かない。

だから、お節介な中村が余計なことを言わないかどうか、内心ハラハラしていた。





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