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act.15…喜んでくれるなら


結局、持っていたパイを俺から奪い、蓬莱は一口、また一口と口に運ぶ。

生焼けのパイを大量に食べて身体にいいわけがない。


「やめろ、腹壊すぞ!?」


蓬莱は止めておいて丸井や岳人には食わせてるなんて変な話だが。

とにかく、やめさせられれば言い訳なんてなんでもよかったのだ。


『オーブンで焼いてあるなら平気だよ。それにすっごくおいしいよ!』

「うまいわけねぇだろ。」

『私は景吾が作ったものが食べたかったの。だからそんな顔しないで?』


蓬莱は食べていたパイを皿に戻すと、俺をあやすように頭を撫でた。

蓬莱の言葉で俺は本当に彼女は俺が作ったものであることが大切なんだ、と確信した。


『景吾が作ってくれたものなら全部食べるよ?』

「不味くてもか?」

『不味くても!』

「焦げててもか?」

『焦げてても!』

「生焼けでもか?」

『生焼けでも!』


本当にそんなものを食べたら体に悪いことくらい蓬莱ならわかってるはずだ。

なのにここまで言ってくれるのはなんでなんだ――?


『ありがとう、景吾。』

「……もう作らねぇからな!」

『え〜?』

「元々は罰ゲームなんだろうが!」


照れ隠しで言った言葉だった。

そして、相手はわかってくれていると思い込んでいた。


『そっか…そうだよね。』


蓬莱の寂しそうに笑う顔を見て、俺はなにも言えなかった。

そんな顔をさせたいわけじゃないのに、って悔やんだ。


「あらまぁ、景吾ったら仕方ないですねー…」

「まぁ、初恋じゃからすんなり良い風に結ばれはせんもんじゃ。」


湿気た空気の中、岳人がパイに手を伸ばしていた。

しかし、仁王が咳ばらいをしたもんだから蓬莱に声をかけた。


「蝶〜?これ、俺にも分けてくーださいっ!」

『あ、うん。もちろん、いいよ!』

「やったぁ!」


無意識なのか、わざとなのかわからないが岳人の一言で暗い空気を取り除けた。

しかし、俺は蓬莱に対してどう接したらいいかわからず、一人遠くからみんなを眺めていた。


「(突っ張った性格は良いことねーな、)」


だから、なんとなく自分の性格を責めてしまった。





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