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act-06 千歳千里

【愛玩主人】


景吾から説教を受けた私は執事たちに責められることを避けるために深夜に帰宅した。

結局、顔を合わせたら怒られるんだけど。


「今帰ったと?」

『……千歳。』


どうやら寝ずに待っていたらしい。

誰か彼か起きているのは当たり前だけど、ちょっと驚いた。


『起きてたのね、』

「結菜ば心配で寝れんけん。」

『…ありがとう。』


帰宅した私を部屋まで連れていこうと千歳が迫ってくる。

景吾と約束したんだから今ここで破るわけにはいかない。

出来れば距離を保ったまま部屋まで辿り着きたいけどいつまでも逃げられるわけがないよね。


「結菜、明かりばなか。やけん部屋まで案内するばい。下手に動くと怪我すっとよ。」


いつも見たいに手が延びてくる。

この後、なにをされるかわかってるのに動けない。


「そいやい、」


あっという間に抱え上げられ、千歳の視点まで一気に連れられていく。

背の高い彼との距離が縮まり、緊張が走る。


『千歳…』

「なにか?」

『疲れてるから早く休みたいの。すぐ部屋に連れてって。』

「仰せんなりいたしますたい。」


変な間を作らないようにすぐに指示を出した。

それに千歳は従った。



部屋について疲れがどっと押し寄せた。

こんな短時間で疲れ切ってしまうなんてね。

私がふぅ、とため息をつくと千歳は優しく背中をさすってくれた。

不安な気持ちを悟られたか。


「着替えるたい?そん間にココア持っちきてやるとよ。そいとも(※それとも)…」


千歳はそう言うと静かにベッドの縁に座らせてくれた。

身を起こす時に唇をなにかが掠(かす)めた。


『千歳…!』


文句は受け付けてもらえなかった。

唇を塞がれ、言いたい言葉が出てこなかった。

いつの間にか後頭部と腰を支えられてて、より深いキスが可能になる。

屈んでいるものの千歳に主導権を握られている以上、首が痛くなるほど上を向かなくてはいけない。


『んっ…ふ…』


少しの隙間から酸素を取り入れようとするのにそれさえままならなかった。

ぬるっとした物が咥内を犯す。

舌が絡まりあい、唾液が混ざり合い、量が増してゆき、口の端から流れ落ちたのを千歳が手で拭った。

結局、苦しみに耐え切れず、唾液を飲んでしまった。


「こぼしたっちゃ、」

『よくも飲ませたわね!』

「結菜、愛らしか。」

『バカ!ココアはどうしたの!』


主人らしく叱り付けるものの彼には全く通用しない。

背の高い彼を見上げる形で説教しても彼からの視点では上目使いになってるんだもん。


「んー…こげん愛らしい結菜置いてココアば作っちょる場合じゃなかとよ。」

『…自分から言ったくせに。』

「そいとも、の続き聞いやないっちんの(※聞いてないってのが)残念たい。」

『続き言う気なかったくせに。』

「いら(※あら)、わかっとった?」

『当たり前よ。』


こう付き合いも長ければ、千歳の考えはだいたいわかってしまう。

とはいうものの未然に防げないのは悔しい。

なにか企んでいる時の顔付きは少しながらわかるようになったのに。


「飲みたいと?」


別にココアが飲みたいわけではなかった。

ただ、早く千歳を部屋から去らせて閉め出してやろうと思ってた。


「残念ばってん(※だけど)、俺は結菜から答え聞いやない。」

『答えさせてくれなかったんじゃない!』

「そげんだっけ?」


千歳は惚(とぼ)けた顔をして笑う。

確信犯め。

千歳は頭がいいから先の先まで瞬時に悟ることができる。

お陰でこんな恋人まがいなことをしている。


『ちょ!なにしてんのよ!』

「見てわかんなか?脱のしぇとう(※脱がしてる)。」

『そんなこと聞いてない!』


千歳は手際よく服を脱がせていく。

誰の許可を得てそんなことしてるのだろうか、その口に言わせたい。


『ちょっと千歳。』

「なにか?」

『誰の許可で服を脱がせてるの?』

「結菜ん心たい。」

『バカ言わないで!』

「脱のしゃれ慣れとうくせに。」


幾度となく執事たちに服を剥ぎ取られてきたんだから慣れもする。

別に動揺もしない。

ただ、下着に手がかかるのは何度やられても慣れない。


『ダメ!』

「なしけん?」

『ダメなものはダメ!』


景吾との約束、彼の表情が脳裏を過(よ)ぎった。

千歳の胸板を押して退かせようとしたけど全く効果がなかった。


『景吾に怒られるようなことはもうしないで!』

「…怒られたん?」

『…ちょっとね、』

「告げ口すっから怒られんばい。」

『あのねぇ?自分、罪を犯してる意識ないわけ!?』

「好きんヤツに迫るん悪いと?」


千歳がきょとんとした顔で言ったことに唖然とした。

罪の意識は全くないのか。

その上、潔白さを語り始めたら殴ってやる。


「まぁ、それはもう良いたい…ところでさっきん質問ん答え聞いやない。飲むたい?」

『……飲む。』


とにかく部屋から千歳を追い出せばいい、なんて思ってた。

だから千歳の行動には驚いた。


「結菜にはこれ、飲ませちゃるばい。」

『え?……ちょ!』


目の前で誘惑してくるのはココアじゃなくて彼のモノ。

なにを考えてるのか。


『バカ!しまいなさい!』


なんて言い方もどうかと思うけど、千歳にそう説教をかました。

しかし、彼に通用はしない。


「結菜は俺のばくわえるん好き。違(ちご)うとる?」

『っ、』


唇に押し付けられ反応に困った。

千歳は私の手を掴むと自身を握らせ、フェラを促してきた。


――舐めてはいけない。


頭ではそう信号を送ったのに身体は違った。


『ん…』

「っ、そげん、よかね…」


飼い馴らされた身体はすることをしっかり覚えている。

彼を舐め、手で扱きながら想像するのは彼によって乱れている自分。


『んっは、ふっ、は、』

「上手くなりよったな。」


嬉しくない褒め言葉だった。

でも、反対に千歳は嬉しそうだった。


「もういいっちゃ。」

『んっ……はぁはぁ…』

「出来具合ば確かめてみろ。」

『あ、ふっ――んっ!』


千歳は私をいつもと変わらず犯す。

私も彼に与えられる興奮が堪らなく好きなのだから救いようがない。


『千歳…っ!』

「愛らしか結菜。」


私は彼らに与えられる刺激で慣れてしまったのか…もっと快感を得たいと思うまでになっていた。

今夜の場合、千歳により快感をねだる自分がいる。





あきゅろす。
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