act-02 白石蔵ノ介
【初体験】
うちの執事たちはみんな同年代なんだけど、その中でしっかり者の白石を執事長に任命している。
教育、しつけ係なんだけどかなり、いや半端なく厳しい。
どんなことするかというと…勉強に加え、生活の面での教育――例えば歩き方、話し方、テーブルマナーなんか。
『もう疲れたー!たまには堅苦しくない勉強がしたい!』
「はしたない格好しなや。女の子が床に寝そべるもんやないで?」
『千歳が教えてくれたの。こうすると良いって。』
「(アイツ…)」
グダグダして身が入らない私を見て、白石はため息をついた。妥協してくれるのかも、と期待して彼を横目に見た。
「しゃーないなぁ。」
『違うことするの?』
「新しい勉強しようか。」
『……やだ。つまんない。遊びたい。』
小さな子供みたい、と自分で自覚はしてた。ただ、たまには楽しいことをしたいもんで…
「わかったわかった。楽しいことしよか。」
『チェスとかならしないからね。頭使うゲームは仁王とやりなさい。』
「ちゃうちゃう。一応、遊びや。で、ついでに勉強も出来るん。」
『一石二鳥じゃない!』
私は楽しめる勉強を考えた白石を褒めた。しかし、私が楽しめることだったか、という点で後に異議を唱えた。
「ほんなら場所移動や。」
『はーい!』
白石に連れて来られたのは執事(白石)用の部屋。男の部屋がこうも綺麗だと感心する。
『綺麗にしてるじゃない。』
「お褒めに与(あずか)り、光栄です。」
白石は執事らしく胸に手を置き、綺麗にお辞儀をした。
『ここでなにするの?』
「成長と共にマナーを覚えなアカンのがあるんや。なにかわかるか?」
『社交ダンス?』
「アホ。こんな狭いところで出来るか。」
白石は私の背後に立つとネックレスを外し、髪止めを外して机に置いた。そして、はいていたショートパンツのベルトに後ろから回された手が触れた。
「今から実践兼ねて教えたる。」
『な、にするの?』
白石はベルトを外すと後ろから抱きしめた。なにをされるか予想がつかず、不安と緊張から心臓が高鳴った。
首筋に柔らかいものが触れて体が驚いて強張った。それを見てか、耳元でわざと息が吹きかかるように囁く。
「なんの勉強かわかるやろ?」
『し、らない…』
白石の片手が着ていたセーターの中に滑り込んだ。上へ上へ移動していく手を阻止しようと手を掴んだ。
「わかったん?」
『わかっ…た。』
「ベッドマナーや。」
『そんなの教えてくれなくていい!』
白石はもう片方の手でブラのホックを外した。片手で外すことに慣れていなければ、こんな簡単に出来ないだろう。
「今は勉強時間や。まだあと1時間半あるし、」
『や、めて…』
「乳首起たせてよく言うわ。」
『んっ!』
ブラが外されたことで胸に触れられた。鳥肌が立つと同時に起った乳首は白石が遊ぶのにもってこいだった。
「柔らかいな。」
『離して!』
「嫌や。これからが楽しいんやから。」
白石はそう言うと私のセーターを脱がせた。静電気で髪がボザボサになったのを直すより、胸を隠すほうが優先だった。
「なに隠してんねや?」
『やだ、来ないで!』
「そんな格好で部屋から出られへんやろ?こっちきぃ?」
『やだよ。』
「…まったく、可愛いんやから、」
白石はため息混じりに言うと自ら近付いてきた。腕をひいて抱き抱えるとキスされた。
『ふっ…んー!』
拒んでみたけど無駄な労力で、貪るようにキスしてくる白石のせいで酸欠になる。それだけでなく、体中が痺れるような感覚に陥る。
「…!」
知らぬ間に自ら白石の首に腕を回してキスに応えていた。
しばらくすると、白石は解放してくれた。
「ふっ…はっ、…結菜?」
『はぁ…はぁ…なに?』
「覚悟しぃや?」
その意味はよくわからなかった。
でも、すぐに理解した。
『いっ!』
首筋に痛みが走る。摘まれたような痛みとはちょっと違ったけど、そんな感じ。
白石は私の手をひいてベッドのふもとまで誘導するとすぐに押し倒した。
「…ええ体してんねやな?」
『見ないで…』
白石の目を両手で隠した。すると、ふと笑い、カーテンに手を伸ばしてレールの上を滑らせた。
暗くなると白石は言った。
「残念やけど、これで見えへん。」
そう言うと私の手を退かした。
白石は私の前で服を脱ぎはじめた。上着を脱いでネクタイを外し、Yシャツのボタンを外し、ズボンのベルトをバックルから外した。
私はなぜかその場から逃げられなかった。ただ、白石の行動ひとつひとつを見ていた。
「それ、もういらんやろ?」
ホックが外れても胸を隠すのに使っていたブラ、本来の意味をなさないそれを腕から取り上げ、床に投げた。
「俺に任せといたらええ、」
『そんな勉強しなくていいよ。』
「教育の一貫や。」
『っ、』
教育という義務感から私にこんなことしてるのか、と思うとなぜか苦しかった。
白石に意志がないみたいで、まるでそれを私が奪ってるみたいだから。
「まだなんもしてへんのになんで泣くん!?」
『もう十分だから。』
「なにが?」
『白石は自分が本当に好きな人とそういうことしなさい。私のためにこんなことまでしなくていいよ。』
涙を拭う私の手を掴んだ白石は瞼に唇を寄せた。その後、私は目をつぶったままそっぽ向いた。
「好きやからしたいんや。」
『…え?』
「結菜が好きやから罪犯してまでしてるん。教育やって言い訳してな。」
『白石…!』
「堪忍や。」
白石はそう言うと私のショートパンツに手をかけた。有無を言わさずに脱がすと同時に白石は下着までも一緒に脱がすた。
『や!』
「もうアカン。苦しいんや。」
私の手を自身の膨らむそれに誘導して服の上から触らせた。異常じゃないか、と思うほど膨らんでいるそれは熱く、私はどうすればいいかわからず言葉を失った。
白石は私の手になすりつけるように腰をゆっくり動かした。
「結菜…悪い。」
そういうと白石は私の脚を大きく開き、体をその間に入れた。そしてジッパーを下ろし、白石は自身を取り出し、私のナカに半ば無理矢理挿入しこんだ。
『う、ああっ!!』
割と滑ったとはいうものの、圧迫感と息が詰まるような苦しさに声が上がる。
「(落ち着け俺。結菜のことよう考えろ。落ち着け、…落ち着け。つか、慣らさんと突っ込むなんて辛抱足らなさすぎやろ。)」
初めてのベッドマナーは痛みに堪えるだけで全然楽しくなんかなかった。
『…痛い、』
「せやから悪い、って言うてるやろ。」
『歩けない。動けない。』
「はいはい、すいません。」
口では謝ってくれてるこど真剣さに欠けた。あまり悪いと思ってないだろう。
ところで白石は楽しかったのか尋ねると憎たらしいことに奴はこう言った。
「結菜の初めていただけたし、痛がる結菜が可愛くてたまらんかったな〜」
『変態、死ね。』
「……これからもレッスンは続くんやで?」
私は自分の暴言で白石がそう言ったことに気付いた。鬼、と内心で呟いた。
『ヤダ。絶対もうしない。』
「慣れれば楽しいて。他の男じゃ満足出来ひんくらいにしたるで?」
『結構です!』
「お嬢はつれないな〜」
白石はベッドから動けないでいる私を腕の中から自由にする気はないのか、力を緩めてはくれない。…と、言うより動けないだけか。
あんな酷いことされたのに白石を嫌いにならないのも不思議だと思う。
『白石、ベッドマナーなんか必要?普通それって恋人と学んでいくものじゃない?』
「俺やったら不満なんかいな。」
『婚約者がいなければ知らない。』
そう言った私の言葉を聞いて妙に嬉しそうにしていた白石は気持ち悪かった。
でも、それを見て私まで嬉しくなった。
伝染したんだと思う。
『はぁ、初体験の相手が白石なんてね。』
「テクはあるで?」
『そういう意味じゃなくて!』
悪い、後悔してる、といったそぶりを見せない辺り、彼は懲りずにまた近づいてくるだろう。
突き放せばいいのに出来なかったせいで私は回し者になる羽目になる。
自業自得か。
ところで、私はなにがマナーだったのか初体験で理解することはなかった。
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