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act.32『友達なら良いのに』
(跡部視点)


彼女を敵に回すと痛い目を見るだろう。


「おまえの望みはなんだ?」


そう聞くとニヤリと意味深長に笑うこももを見て背中に悪寒が走った。


「自分の決定をみんなが悔やむことかなー?」

「……………」

「後戻り出来ないことにせいぜい苦しめばいいのよ。」

「そんな言い方はないんじゃねーか?」

「あら?そんな口利ける立場なの?」


そう言われ、口を閉じざるを得なかった。

やはり、こももを敵に回してはいけないと本能的に悟った。

その時、部活が終わることを知らせに仁王が近づいてきた。


「こもも、もう帰っていいぜよ?デートなんじゃろ?」

「あ、うん!じゃあ、洗濯カゴだけ片づけてくる。」


軽い足取りで走っていったこももを見て俺は仁王に尋ねた。


「こももを宍戸にとられて悔しいか?」

「いいや?俺はある面に関して宍戸より勝ってる。だから満足しとうよ?じゃけ、宍戸はどうか知らん。」


そう言われ、宍戸の気持ちを正確に知る必要があると思った。


「ねね?これから跡部くんはなにか用事あるの?」

「いや、帰るだけだが。」

「じゃあ、東京まで一緒に行こう?」

「あ、あぁ。」


俺を見送るついで、と言いながらこももは俺の隣を歩いた。

自然とこももの歩みにあわせる俺がいた。

歩いているとすれ違う奴らがこももを見て振り返っていく。

それはリョウも同じだが恐らくこももの場合は他にも理由があるだろう。


「おい、」

「なに?」

「その格好はどうにかならないのか?」

「半分は雅治の趣味だからね(笑)」

「あとの半分は?」

「ママさんと由紀ねぇ(姉)の趣味。」


そう聞いてなにも言う気にならなかった。

家族でそんな格好をさせるとは部外者がどうこう言っても仕方ない。


「こういう格好苦手?」

「リョウにはさせたくないな。」

「あー…どっちかというとこももはド派手だしね。リョウちゃんは清純派?」

「白いワンピースとか着せたいな。」

「わかる!リョウちゃん可愛いから似合いそう〜」


こももと話をしてても気を使わないですむから楽だと感じた。

こういう奴は友達に向く。





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