act.30『打撃』
(跡部視点)
彼女の返事を聞き、胸をなで下ろしたみたいだったが彼女の頬の赤みに気づくや表情は一変した。
「このほっぺ…どうしたよ?」
「なんでもないよ?」
宍戸に次の瞬間睨まれたのは言うまでもない。
今更悔やんだって仕方ない。
「跡部……お前!「待って落ち着いて、宍戸くん!!」
「落ち着けるかよ!こいつ、女を叩いたんだ!」
「違うの違う!こももが悪いから!だから跡部くんを殴らないで!!」
俺を殴ろうと堅く手を握っている宍戸をこももと言う女はなんとか制止させていた。
「でも、殴るのは許さねぇ!」
「平気だよ、平気。宍戸くんや跡部くんの痛みに比べればね?」
「冷やしてこいよ。」
「平気だよ?」
「いいから冷やしてこい!!」
怒鳴りつけられる形になるとこももは肩をビクンと動かした。
「わかった……でも、跡部くんを殴らないで?」
「わかった、」
こももがその場からいなくなると宍戸は俺を睨みつけて言う。
「何で殴ったかは知らねえけど……俺は許さない。」
「………………」
「黙(だんま)りか。そういうのってズルいよな。」
宍戸はこももの後を追っていったみたいだった。
足音が遠のいていった。
「お、俺が女を…叩いた?」
何かの間違いだと思いたかった。
俺だって彼女を叩きたかったわけじゃない。
リョウと俺の関係を否定されたみたいでただ悔しかった。
「ごめ……」
誰もいなくなった部屋で呟いても、無意味なのに黙ってはいられたかった。
「ッ、ごめんな……リョウ、」
リョウと同じような顔をした女を平気で俺が殴った。
いつかリョウにも同じ事をしてしまうのではないかと自分を恐れてしまった。
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