act.28『うり二つ』 (跡部視点) 聞き違いかもしれない、と思うこともできたが朝から行方がわからないために気になってしまったらしく周りを見渡した。 さらに文房具を選んでいたことも忘れ、探し歩き始めた。 「だからって、変なもん食わすなよ?」 一番近くにある本棚は料理関係の棚でそこに宍戸の後ろ姿が見えた。 『(なんだ本屋さんにきてたんだ………!)』 リョウは目を疑った。 宍戸の隣には髪が長く、ミニスカートの女性の姿があったのだ。 『し、しど……』 友達というには難しい――つまり、密着していた。 それを見たリョウはその場に固まってしまった。 「おまえの料理とかなんか怖ぇーよ。」 『食べられるもの作れるように頑張るもん。』 「おいおい(汗)」 どこか楽しそうに見える二人は一冊の本を持ってレジに向かう。 遠ざかる二人の背中にリョウはとっさに口を開く。 『宍戸!』 「………今、呼んだ?」 宍戸がふと立ち止まり、一瞬リョウは安心した。 しかし、宍戸が振り向いたのではなく『呼んでないよ?気のせいじゃない?』と宍戸に言う女性が振り向いたのだ。 『!』 驚きのあまり、リョウは鞄を落とした。 『う、そ……わ…たし?』 瓜二つ、としか言いようがないほどに自分に似た姿をした彼女はリョウを見て、ニヤリと怪しく笑うと宍戸を連れて姿を消した。 「リョウ!」 時間になっても戻らないリョウを探しまわり、ようやく見つけた時には宍戸と話で聞いた女の姿はなかった。 『……け、景吾さん…し、宍戸が…』 放心状態のリョウから話を聞いて俺はイヤな予感がした。 リョウにそっくりな女なんかそうそういないだろうから余計だった。 → |