act.27『運悪と呼ぶ』
(跡部視点)
岳人とようやく分かれ道で離れられた俺たちは足を進めた。
「たく、岳人のヤツ。」
『よほど楽しみにしてるんだね?』
悪態をつくが隣でリョウが笑うから岳人ばかりを責めることもできなかった。
リョウがすることすべては憎めないんだよな。
『景吾さんは読書が好きだから本屋さんに行く?』
「あ?あぁ、涼しいから丁度いいな。」
『ちょうど文房具もなかったし。』
「じゃあ、本屋で決まりだな。行くぞ。」
本屋までの道中、珍しいものを見れば立ち止まり、写真を撮りたいと携帯のカメラを起動させてカメラに収めていた。
リョウは本屋に来ると予想以上に大きい建物を驚いてしばらく口を開けたまま見上げていた。
それだけではなく、中に入ると本の多さにも驚いていた。
『忍足さんはラブロマンンス系の本がお勧めって言ってたけど…』
「そんなもん誰が読むんだよ。」
『景吾さんは推理ものが好きだよね。なんとかドイル…?あ、前に宍戸は歴史系を読んでたな。』
「宍戸は地理、歴史が好きだからな。」
『景吾さんは冒険ものって読まないの?』
「ミステリー系なら読むな。」
『ミステリー?』
「少し怖いやつだ。」
『怖いのはやだ……』
「リョウは怖いの苦手だからな。」
思い出すだけでも怖いと言った感じにリョウは俺の服の裾を握った。
家の廊下に鎧人形が置いてあるのだが、初めて見たときから今に至っても怖がっている。
撤去することも可能だがリョウの怖がる姿があまりに可愛いからしない。
『景吾さん、まだここにいる?』
「あぁ、そうだな。どの本にしようか悩んでるし…」
『じゃあ、待ってて?文房具見てくる。』
「一人でか?俺も行く。」
『平気!同じ階にあるわけだし。15分経っても帰ってこなかったら迎えにきて?』
「……はぁ、気をつけろよ?」
『はい、』
リョウを見送るが不安は消えない。
俺は15分キッチリ時計で確認してやろうと思った。
『(…えっと、消しゴムと…芯と、)』
たくさん種類がある中からリョウが真剣に選んでいた、その時だ。
聞き覚えのある声にふと顔を上げた。
『し、しど…?』
彼女はその声の人物を一瞬でも疑いやしなかった。
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