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act.18『親友』
(宍戸視点)


俺はバイト先に遊びに来た仁王にすべてをグチった。

氷帝での出来事は他校のヤツに言うのが楽なんだ。


「……もう一回言うてくれるか?」

「だーかーら!リョウが人間になったんだよ!!」

「……また、冗談。」

「ホントだっつの!」

「あー…悪い夢と違うか?」

「夢の方がずっと良いぜ。」


何度同じ話をしたことか。

無理もないのだが、アイツは俺の話をなかなか信じない。

詐欺師なんだからコロッと騙されたふりくらいしてくれてもいいのに、とか思う。


「したら彼女は家にいるんか?」

「いや、跡部が連れて帰った。」


不思議そうな顔する仁王に説明した。

リョウにどんな顔して、接したらいいかわからないこと、前のように楽しく生活できそうにないことを。


「あー…俺はそういう問題を抱えたことなか。」

「俺どうしたらいいかわからないんだよ。女の扱いなんてわからねぇもん。おまえじゃあるまいし。」

「ま、確かに俺は女の扱いは慣れちょるな。得意分野じゃ。」

「偉そうに言うもんじゃねぇだろ!」

「はは、宍戸にしたら女は未知の世界じゃよな?」


そう、女のことなんか何一つ俺はわからない。

だから仁王に相談したのになんで笑いに変えやがるんだ!?

……なんて思った時だ。

妖しく目を輝かせた仁王に自然と構えてしまった。


「に、仁王?」

「よし、明日は氷帝に進入じゃ。」


次の瞬間、案の定仁王が俺の首根っこを抱き寄せて言う。


「おまえんち泊まる。」

「はぁ!?」

「おっと…真田に言わんと!」


携帯を出し、仁王は電話をし始めた。

その前に俺の首を放せよ。


「こんな時間になにごとだ!!」

「あー…明日俺、学校行かんから部活休む。てことでよろしく。」

「なに?なぜ休むのだ!?」

「お遊びに「たるんどるぞ仁王!!」


どれだけ叫べば携帯から声が漏れるってんだ?なんて思った時だ。

仁王は容赦なく終話ボタンを押しやがった。

いいのか、そんなことして?


「ふぅ、まったく。ゴリラみたいに吠えるとはアイツ、実はゴリラなんか?」


ようやく首を放した仁王はぶつぶつ言いながら歩き始めた。

俺は痛む首をさすりながら仁王を見てた。


「帰らんの?」

「おまえ由紀恵(姉)さんに会いに来たんじゃねーの?しかもおまえんちはあっち!」


仁王が歩いてる方向と逆を指させば、仁王はニヤリと笑う。

気にしなさんな、とだけ言い、また歩きだした。


「結局泊まるのかよ…布団敷かないと。」

「別に同じ布団でもよかよ?」

「バカ言ってんじゃねぇーよ!!」

「俺やてごめんじゃけ。」

「だったら言うなバカ!!」

「バカにバカって言われとうない。」

「なにー!?」


仁王、おまえは俺を元気付けようとしてくれてんだろ?

いつも、わからないようにさりげなく助けてくれる。

くだらない話でイヤなことを忘れさせてくれんだ。

すげぇ苦手だった奴が今は頼もしい奴だと思える。


「なに間抜け面しちょるん?」

「なんでもねぇよ、」

「ま、いつも間抜け面やからあまり普段と変わらんけどな?」

「うっせぇなぁ!」


今、俺を一番理解してくれるのは氷帝の連中じゃなくて――


「仁王、うちまで競争だ!」

「よしきた!」

「「ゴー!!」」


仁王雅治かもしれない。

アイツのあだ名が“詐欺師”だから親友と呼ぶには抵抗があるけど(笑)





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