act.15『友達』
(跡部視点)
宍戸との口論の末、岳人に怒らこられた。
アイツに言われたことが的を得ていたため、なにも言い返せなかった。
確かに宍戸には悪いと思ってる。
だが、宍戸のためにしてやったことなのにお節介とまで言われた。
「なにしてんだ、俺は…」
周りに冷ややかな目で見られ、リョウは宍戸に見放され、置いてかれた。
『け、ごさん?』
「ごめんな、リョウ。」
『?』
見た目は同じ年くらいでも気持ちが幼いおまえにはまだわからないかもしれない。
宍戸と俺の間に入った亀裂が修復不可能なことを。
「心配すんな、俺が面倒みてやる。」
『……はい、』
「(宍戸の代わりにはならないが宍戸以上に可愛がってやるから……)」
宍戸のためになにかしたかっただけだということを誰が認めるだろうか?
そう簡単に口にはしないが、宍戸は大事な友達だ。
ガキみたいに言った“嫌い”という言葉を聞いて柄にもなくショックを受けた。
宍戸、俺は後悔してる。
だが、関係を戻せないというなら進むしかないよな?
「宍戸、結局授業こえへんかったな?」
「部活にはくんじゃねーか?」
「なぁ、跡部?これからどないするん?リョウと宍戸がうまく生活できるとは考えられへんねやけど…」
そう言った忍足の言葉が頭の中でグルグルと回っていた。
部活の時間になると(どこで時間を潰していたのか知らないが)、宍戸がかったるく歩いて来るのが見えた。
周りも俺たちのなにか異変に気づいたのかなにも言わない。
気まずいまま、部活をしていた。
楽しくもない部活が終わるとリョウの周りには俺が許した幾人かの人間が集まっていた。
「で?コイツがリョウなわけ?」
『は、はい。改めて初めまして。』
「なんか犬の時から容姿が綺麗だったから今この状態なのもわかりますよね。」
人なつっこいジローや鳳に可愛がられ、リョウ本人は友達ができたと喜んでいた。
「毛並みもよかったから今もツヤツヤですもんね。」
「ウス、」
『それはたぶん、宍戸が毎日綺麗にしてくれていたので。』
「「……………」」
わりと無口な日吉や樺地とも話をしているところを見ると、リョウはあまり人間に対して隔たりを感じないようだ。
「岳人が言うようにマジでこんなの見たら犬に返すのもったいって思っちゃうC。」
ジローは宍戸に聞こえないように呟いたが聞こえていたのだろう。
さっさと部室へ戻ろうとする宍戸を俺は少しばかり勇気を出して声をかけた。
「宍戸!」
「……あ?」
当たり前だが俺に対しての当たりが悪い。
痛む気持ちを隠し、いつもいつも通りに振る舞うことにした。しそうに話をしていたからだ。
「好きにしろ…か。本当に良いんだな?」
一人呟き、俺はリョウたちの元へ帰った。
ただ、忍足だけは気にかけて声をかけてくれた。
「宍戸なんやて?」
「好きにしろ、だとよ。」
「…なぁ、跡部。珍しく自分がしたこと後悔してるんとちゃう?」
「……うるせぇよ。」
忍足にバレていることも、宍戸に素直に謝れないことも、自分の過ちもすべてに嫌気がさす。
今回ばかりは自分の力を過信し過ぎてしてしまったようだ。
「リョウ、帰るぞ。」
『あ、はい。』
機嫌悪くもリョウに声をかけると慌てて走ってきた。
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