act.13『黙ってろ』 (宍戸視点) 『景吾さん、ここはなに?』 「教室だ。ある人数を収容して勉強する部屋のことだ。」 『ふーん?あ、これは?』 「これに座って勉強すんだぜ?」 あれやこれやと質問するリョウに丁寧に答える跡部。 俺にはそんなこと出来ない。 「オイ、跡部、」 「あん?なんだ?」 「なんで俺の隣にリョウを座らせんだよ!?」 「だめなのか?」 めんどくさいことにリョウの席が俺と跡部の間。 授業中、集中できそうにない。 俺は勉強が好きなわけではない。 しかし、このときばかりは静かに勉強したいと思った。 『これはどうしたらいいの?』 「ここはこうして……」 『そっか、あ…でもこれは?』 よくぞこそまで質問出来るよな、とはじめは呆れてた。 けど、それは徐々に苛立ちに変わる。 「うっせぇんだよ!おまえ少しは黙ってろ!!」 俺は授業中に限界に達し、リョウに怒鳴っていた。 ビクッ、と肩が震えたのにも気がついた。 「宍戸、授業中だぞ。」 「すんません、」 適当に返事をしてまた俺はノートにペンを走らせた。 『あの…ごめんなさい……』 「わかればいいんだよ。」 ぶっきらぼうにそう言い、リョウと反対側を向いて机に寝そべりながらノートをとる。 『(私、もしかして嫌われ、た…?)』 「チッ、」 泣きそうなリョウを見て、跡部が露骨に舌打ちする。 そして、授業中だというのも忘れて口論が始まる。 「宍戸、リョウを泣かせるな。」 「泣かせてねぇよ、勝手に泣いたんだろ?」 「だとしても、おまえのせいだ。」 「知るかよ。」 「ふん……小せぇ、男だな。」 「んだとぉ!?」 「跡部、宍戸、静かにしろ!」 俺らの間で涙を拭いながらおろおろしているリョウ。 近寄ってくる教師。 席から立ち上がって慌てて俺らを引き離そうとする忍足。 「元と言えば、てめぇがリョウをこんなんにすっからだ!」 「リョウが良いなら良いだろうが!」 「コイツを今更どうやってペットとして見ればいんだよ!!」 「今まで通りでいいだろうが!」 「人間の女に愛情なんか注げるかよ!!」 そう言ってから沈黙した。 その沈黙をしばらくすると跡部が破った。 「………だったらリョウはいらねぇんだな?」 「それとこれとは……」 言葉を濁した俺に跡部は容赦なく秘めた言葉を突きつける。 「いらねぇんなら、俺様がもらう。」 俺は目を見開いて跡部を見た。 目に映る跡部はいつになく真剣だった。 内心、怖かった。 → |