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act.2『助け』
(宍戸視点)


警察に聞いた事故の詳細はこうだ。

飲酒運転をしていた運転手による事故で、対向車が父さんの運転する車の運転席側に突っ込んできたのだ。

そのため、父さんと兄貴は即死。

助手席にいた母さんはぶつかった衝撃で頭を強く打つなど意識不明の重体で病院に搬送されたが、間もなく死亡。

車は大破したという。

幸い、俺は助手席の後部座席に乗っていて、車体に挟まれ怪我をしたというものの、命に別状はなかった。


「嬉しくねぇよ!な、んで…俺だけ……うわぁぁぁぁぁ!」


ヒステリックに叫んだのを覚えている。

そんな俺を仲間が支えてくれたのも感謝している。


遺産をどうするか、などわからないことだらけで精神的に疲れたとき、支えてくれたみんなに感謝してる。

それだけではなく、金銭面で困ったことを助けてくれたのは意外にも神奈川の立海大に通う、仁王雅治。

アイツにも感謝はしてる。


「よう、宍戸。」

「お、仁王じゃん。今日はなに?今は由紀恵さんいないぜ?」

「いんや、別にいいん。おまえに用事があってな。」

「俺に?」


高校に行きたいが、金がなくて困っていたときだ。


仁王はどこから俺の情報を手に入れたのか知らないが、わざわざ向こうから俺を訪ねてきた。


“バイトせん?”


この時の俺の反応は今でも覚えてる。

苦手だった仁王雅治に誘われる、良い反応はしなかった。

だが、仲良くなれたのはこのおかげだ。


仁王の姉である由紀恵さんは当時20歳で結婚して東京にいた。

その由紀恵さんの旦那さんがガソリンスタンドを営んでいるらしく、バイトが出来るように手配してくれた。

俺は2年以上経つ今でもそのスタンドで働いている。

つまり、現在は高等部3年。


「何時に終わるん?」

「えっと、もう上がれると思うんだよな」

「そうか…なら待っちょる。」


仁王がスタンドに来るのはしょっちゅうだったが俺に用事があるなんて珍しかった。

仕事が終わり、仁王の元へ行くと腕を引っ張られた。


「ど、どこに行くんだよ!!」

「ここに来る途中、見たん。」

「なにをだよ!?」

「子犬。」


5分も歩かぬうちに仁王が立ち止まった場所は踏切の手前。

そして、仁王は線路を指さす。


「……踏切が血塗れってどういうことだよ!?」

「俺、見たんよ。子犬と線路を歩く母犬を。でも子犬の一匹が踏切のあの亀裂に足を挟めて身動きとれんかったらしい。」


仁王はポツリポツリと踏切を見ながら言葉をこぼした。

俺はただ聞いているだけだった。


「母犬がその一匹を助けに戻った時、」

「電車が来たってわけか。」

「なにも出来んかった。どうしてやればいいのかわからんくて……」


目の前での出来事にショックを受け、さらに後悔しているのか仁王は俯いたままだ。


「残された子犬は全部で三匹。」

「どこにいんだよ?」


仁王に案内され、指を指したところを覗くと震えながら身を寄せ合う三匹の子犬がいた。


「それでな?俺、コイツらの世話してやりたいん。」

「ふ〜ん?」

「おまえ一匹飼ってみんか?」


仁王のこの一言が家族を失った俺の人生を変えることになった。





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