act.11『亀裂』
(宍戸視点)
認める気はなかった。
「だとしてもペットだろうが。」
「そんなのリョウじゃねぇ!!」
「宍戸、俺はこんな良い女見たことないぜ?」
「うっせ!俺だってそんなペット見たことないっつーの!!」
忍足はのんきに目玉焼きを焼き、皿に盛りつけている。
人んちのキッチンで(怒)
「俺様からのプレゼントだぜ?」
「いらねぇよ!!俺はリョウでいいんだよ!」
「リョウだろ?」
「人間じゃなくて、犬のだ!!」
こみ上げてくる怒りを抑え、なんとか耐える。
「まぁ、今更グダグダ言ってもしょうがねぇよ。」
「自分勝手なヤツだな!?」
「犬には戻れないんだからな。」
「はぁ!?」
「うちの研究グループが開発した薬を投与したんだ。そう簡単に解毒剤なんか出来るかよ。」
「おまえんとこの研究グループだからこそ、だろ!?」
「とにかく、受け入れてやるんだな。」
跡部にそう言われ、ブチ切れそうになる。
人間になったリョウは生活上、疑問だらけならしく、口を開いたかと思えば“これはどうすればいいんですか?”と言う。
跡部は一つずつリョウに教えてやっているが、そんな光景は珍しい。
女相手でもそこまで優しくしているのは見たことがない。
「ちょ、学校に連れてく気かよ!?」
「あん?ダメなのか?」
「冗談じゃない!誰が世話すんだよ!!俺はリョウじゃなきゃ世話なんかしねぇからな!」
我慢仕切れず、俺は鞄を持って家を飛び出した。
「頭の堅いヤツだな。」
「……なぁ、跡部。ホンマに元に戻らんの?」
「ホルモンバランスが崩れなければな。」
「?」
跡部がこんなにも人間のリョウに至れり尽くせりな時点で気づくべきだった。
大切な関係を一瞬で崩されてしまであろうことに――
→
無料HPエムペ!