act.8『おせっかい』
(跡部視点)
まず、服を買ってやった。
気に入らないのは忍足の好みで買った、と言うこと。
「やっぱ綺麗な脚は見せなアカンからショートパンツに限るわ。」
『(……暑苦しい……)』
難しかったのは下着だった。
「サイズが難しいな。さすがに見ただけではわからんもん(汗)」
「インサイトを持ってしてもわからねぇな。」
「触ったらわかんねんけどな。」
「バカ言ってんじゃねえよ!!」
忍足を殴り、自分で確かめることにした。
アンダーバストを計るべく、胸周りを触る。
「思った通り、細いな。」
「ホンマ、妬まれそうなくらいスタイルええな?」
忍足は下着をいくらか手に取り、本人にあわせながら柄を選びつつ、俺を見る。
「D65だな。」
「ホンマに優秀なサイズやな。」
苦笑しながら忍足は同じサイズの下着を探し始めた。
俺は店員が不思議そうに見ていることだけが気になった。
忍足が鼻歌を歌いながら選びやがるせいだ。
「(それは一体なんの曲なんだ!)」
と、まぁ…そんな調子で服も下着も靴もすべて揃った。
『いろいろありがとうございます。』
なにがなんだか理解していないくせに律儀に頭を深々と下げ、感謝するリョウ。
あの樺地でさえそんな純粋だったろうか?、と思い思い返す。
「せや、人間になった祝いにパフェ奢ったるわ。」
『パ、パフェ…?』
「よし、跡部。いつものファミレスまで頼むわ。」
「あぁ、いつものショボいレストランな。」
「ショボいんちゃうわ。庶民のレストランやねん!」
そう忍足が言ってから時計を見れば、宍戸が自宅に帰るまでまだ1時間ある。
俺たちはレストランへ向かう。
俺がいつもみんなに引いて行かれるレストランに着いた。
いつものように予約無しですぐに席に案内されるところを見ると、この店はいつか潰れるのではないかと気になった。
店員に渡されたメニューを開き、意気揚々と俺たちの分まで注文を済ます忍足。
「そうなんか〜…まぁ、宍戸はバイトしとおるし、仕方ないな。」
『宍戸は夜11時に帰ってくるんです。いつもすぐ布団入っちゃうからつまらないんです。』
「さよかー…でもこれからはそんな思いせんでええと思うし。」
『?』
今、忍足がニヤッと笑いながら俺を見たのが気に入らない。
しかし、考えてることは読み通されてると思うとさすがくせ者だな、と改めて思う。
「お待たせいたしました。」
「お、きよったか。」
『……………』
綺麗にトッピングされたパフェを見て目を見開くリョウ。
忍足はニコニコしながらどうぞ、と器を差し出す。
「バーカ、スプーンの使い方なんかわからねぇだろ。」
「あ、そうか。」
『スプーン?』
俺は片手をリョウの後ろから前に回して腕で包む形になり、スプーンを握らせる。
「ここですくって、口に入れる。おらよ、口開けな。」
『あ、』
素直に開けた口にスプーンを近づけると、パクンと口の中に納める。
表情が徐々に変わっていくのがまた可愛かった。
「(あーあ、なんちゅう顔しとんねや。本人全く自覚ないんやろうなぁ…)」
この時点で何かが変わった気がした。
俺の中にある何かが――
→
無料HPエムペ!