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act.78『遅すぎた恋』
(跡部視点)


宍戸は自分に呼び出しがかかることを珍しく思いながらリョウに近づいたらしい。


「お待たせしまし―――!」

『……久しぶり、宍戸。』


不謹慎にも彼女を見て嬉しくなったと言う。

不謹慎でもないと俺は思うが。


「どうして…ここに、」


しかし、予想外にリョウと再会したことに動揺を隠せず、宍戸はとっさに目を逸らした。


『ずっと、ずっと探してたの、』

「あれから一年だぜ?冗談キツい。」

『冗談じゃないよ!』

「なんで俺を捜すんだよ。もう、俺は必要ないだろ?」


俺にリョウをゆだねて東京を出ていった宍戸にはひねくれたようにしか返答できなかったのかもしれない。


『……宍戸は?私のこともういらない?』


涙を浮かべて言うリョウにうまく答えるために考えて悩んだ末、宍戸は口を開いた。


「彼女いるから……」


アイツは誤解していただろう。

リョウが俺より宍戸を選んだということを知らないために。


『そっ…か。』


リョウは俯いて顔を歪めた。

鞄からある紙の包みを取り出し、リョウは宍戸に無理矢理持たせてから言った。


『帰るよ……でも忘れないで?私は、あの日にあの踏切で出会えたのは……運命だったと信じてる。』


そう伝えてからその場を去った。

宍戸は泣きながら去っていった彼女を見て追いかけられないことに苛立ちを覚えた。

そして、すぐに包みを開けてその中身を見たとき、思い出深いそれを見て唇を噛んだ。


「……リード、」


それは踏切のところに供(そな)えてあった花と一緒に置いてきたもの。

宍戸は手放したはずのリョウと繋がる一本の綱が手元に帰ってきて気づいた。


「責任放棄したつもりはないんだけどな…」


現実を直視し、立ち向かわなくてはいけないことに。





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