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act.66『強くなる』
(こもも視点)


クリスマス後、景ちゃんに食事に誘われていた。

さすがのこももでもすぐに切り替えられなくて断り続けていた。

宍戸くんに会う勇気となにも変わらぬ態度でいられる自信がついたときには1月下旬だった。


「ようやく来たか、」

「ごめんね〜?忙しくて。」

「……よく泣いたか?」


こももの涙を拭う仕草をして心配してくれた彼に強気に返答した。


「いいや?涙はでなかったよ?まだすべてが終わってないから泣けないし。」


そう言うこももに景ちゃんは呟くようにおまえは強いな、と言った。


「食べていけそうか?」

「うん、お言葉に甘えて〜」

「なにがお言葉に甘えて、だ。メニュー決めろって言ったのに。」

「だってー!景ちゃんが食べたいものがこももも食べたいものだったから、」

「あーハイハイ、わかったわかった。」


こももをエスコートして歩く景ちゃんが嬉しかった。

口は素直じゃないけど、目を見ればわかる。

優しく笑ってくれるから不安に思って避けていたことがどうでもよく感じさえした。


「あのドアの向こうに宍戸がいる。自分で開けろよ。」

「ご親切にどうも。だけどこももはそんなに柔じゃないんで〜」


明るく振る舞ってドアを開けた。

それに気づいた一つの陰が動いた。


「(……こもも、)」

「久しぶり〜リョウちゃん、」

『うん、久しぶり。』


まずこももちゃんに挨拶をしてから宍戸くんに視線を向けた。

視界には不安げな表情でこももを見ている彼が映った。


「久しぶり、宍戸くん。」

「久、しぶり…」

「なに暗い顔してるの?」

「こもも、俺…」


なにか言いたいみたいだけど言葉を詰まらせていた。

その時、ちょうど宍戸くんの首で光を反射したものに目を留めた。

それはこももがあげたチョーカーだった。


「してくれてるんだね。」

「あ?あぁ…」

「いらなくなったら捨てていいからね?」

「んなことするかよ!」


声を上げて言った宍戸くんに少し驚いた。

そして、体の横にある拳が微かに震えていたのに気づいた。





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