act.61『ポジティブ』
(跡部視点)
こももは俺が悪いと絶対に責めない。
「宍戸くんが羨ましくてちょっと借りてた…ごめん、て言えばすむじゃない?そんなに自分を悪に導かなくても…」
優しい言葉をありがとうな。
だが宍戸は許してくれるかわからないのだから、あまり甘い考えをして後に涙を見たくない。
「宍戸との間に出来た溝は埋められない。今は仁王が宍戸の親友役だし、俺は必要ないだろ。」
「……バカぁ!!」
そう言った俺にこももは声を張り上げて怒りだした。
跡部景吾に怒る奴なんかそう滅多にいない。
だから嬉しかった。
「宍戸くんをそんなに見下さないの!自分をそんなに過小評価しないの!!」
「……はは、」
「なにがおかしいの。」
「そこまで本気で怒ってくれたのはこももが初めてだ。」
「そうなの?」
「…そうだな。宍戸と仲直りしたらまた俺を親友の部類にいれてくれるだろうな。」
そう言えば満足したように返答するこもも。
最近はこももと話をしていたら自分を元気づけてくれる。
俺にはそんな存在も必要だ。
本気で笑って、本気で泣いて、本気で怒ってくるような、そんな友達がいて幸せだと思った。
「そうだよ、宍戸くんは優しいもん。」
ずっと宍戸のそばにいたこももの言葉だからこそ、信じたいと思った。
すぐには問題を解決できないかもしれないが長い目で見ればいいだろう。
「こもも、クリスマス後にうちに来いよ。うまいもん食わせてやる。」
「ホントぉ?ありがとう!」
ありがとう、と言うべきなのは俺の方。
リョウを宍戸に返すきっかけをくれたこと、本気で怒ってくれたこと、前向きな考えが出来るようになったこと、すべてにありがとうといつか言いたい。
「リクエストあればなんなりと、」
「考えておくね!」
クリスマスの後、再び四人の関係が崩れていくことを誰も予想できなかった。
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