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act.60『悪者と呼べ』
(跡部視点)


クリスマスが近づいたある日、こももから報告の電話が来た。

たぶん、自慢するためだろう。


「こももたちは24日デートなの。いいでしょ?」

「よかったな、」

「…最後だけど。」

「あん?」

「なんでもない。それより景ちゃんたちの予定は?」

「たぶん、俺らは家でゆっくりしてる。」

「へ〜?景ちゃんはイベント好きそうなのに意外、」

「生憎。人混みが嫌いなんで。」


そう言う俺にこももは言った。


「もしかするとリョウちゃんと過ごす最後のクリスマスかもしれないよ?」

「どういう意味だ?」


意味深長な言葉に俺は考えた。

話を流されたが先は最後のデートだと言っていた。

すぐに俺は事態を理解した。


「こももね?宍戸くんが幸せなら、それでいいの。」

「それは前から聞いてた、」

「最後まで役を果たす。25日までは頑張るんだ〜」


こももからは言わないと思い、俺は率直に聞くことにした。


「宍戸と別れるつもりなのか?」


そう言ってから刹那、こももは返答した。

恐らく受話口の向こうで口元をあげて笑っているであろう。


「もし、別れるって言ったらどうする?」

「…別にどうもしねぇよ。」


冷静に返事をしたが受話器の向こう側から動揺してる?、とからかうようにいう声があった。


「こももが宍戸と別れたところで俺には関係ない。」

「でも、宍戸くんがリョウちゃんを持っていくかもしれないじゃん?」


宍戸が俺から女を奪う度胸なんかあるわけないと思うと笑えた。

しかし、二人が両思いならば話は別だ。


「俺がリョウと別れない限り無理な話だろ。」

「悪者っぽい言い方〜」

「だって俺は悪者だ。」

「んー…自分を悪く言う必要はないと思うけど?」


こももは俺を悪くは言わないのを知ってる。

だが、自分を甘やかしてはいけないことも知っている。


「リョウを人間にして、宍戸から奪ったんだぜ?十分悪いだろ。」


その言葉に対して返答したこももの言葉に俺は驚いた。


「返せばいいんじゃない?」


そう言う考え方をしたことがなかったからだ。





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