act.54『優しさが沁みる』
(跡部視点)
焼きそばやたこ焼き。
クレープもあれば、綿飴もある。
俺率いる生徒会の元に計画された学園祭は大いに盛り上がっていた。
『景吾さんも食べる?』
「俺は結構だ。」
「じゃ、俺が食べるC!」
「ずりぃー!!」
「はいはい、岳人。俺のやるから、な?」
たくさんの食べ物を抱えているくせに岳人もジローもさらに求めている。
食欲の秋と言われるだけあるな、と一人納得した。
「宍戸くーん!」
「お、こもも。」
不意にギュッと抱きつかれ、俺は驚いて背後に目をやった。
間違えた、といい抱きついてきた本人は宍戸に抱きつき直した。
「仁王も来てくれたんだな?」
「こももの保護者じゃよ。」
「だって〜宍戸くんの王子様見なくちゃだもんね、雅治?」
宍戸が呼んだと思われる相手は相変わらずのテンション。
無駄に宍戸に触れるこももを見てリョウは表情を歪ませてるに違いない。
大勢で店を回っていたが定時にステージ発表を知らせる放送がかかった。
そろそろ用意しなくては、とみんなが控え室へと向かった。
その場に残ったのは俺と仁王とこももの三人だった。
「…景ちゃん、痩せた?」
「あ?」
「さっき抱きついて思ったの、」
確かにまともに食事が喉を通さないまでになっていた。
家で心配してくる宍戸やリョウは適当にあしらったがこももはそうはいかない。
「食欲ねぇんだ。」
「……なにか食べたいものないの?」
そう聞かれたが思い浮かばなかった。
首を横に振って答えると隣でメニューをあれやこれやと言うこもも。
「わかった。じゃあ今度食べれそうなもの作ってあげる。」
「……おまえが?」
「バカにしないでよ?こももの料理は天下一品なんだから!」
そう言うこももの言葉に笑えた。
ふつう自分をそう高く評価したりしないからだ。
「何で笑うのー!」
「悪い悪い。期待してるぜ?お姉さん?」
「……うん!」
満面の笑みでこももは答えてくれた。
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