act.48『なくなり始める距離』
(宍戸視点)
不安になった。
リョウが泣いてる気がしたからだ。
俺はリョウの頭に手を乗せてから言葉を続けた。
「ごめんな。イヤな思いさせてよ?飼い主失格だな?」
『そんなこと!』
俺に訴えるべく、勢いよく立ち上がったリョウは長い間座っていたせいか、よろけて倒れ込んできた。
それを俺はうまく受け止められた。
「あぶねー…」
『ご、ごめん。』
「足でも痺れたか?」
そう笑った俺とは別にリョウの表情は辛そうだった。
どうした?
そう聞く前にリョウは俺に抱きついてきた。
『宍戸は私の飼い主だよね!?ずっと飼い主でいてくれるよね!?』
「なんだよいきなり、」
『宍戸がこももにとられちゃうんじゃないかって怖かった。避けられてたのは私じゃなくてこももがいたから、こももがいるから私は必要ない、そう思ってるんじゃないかって――』
「バカ。考えすぎだ、」
ストップをかけないとリョウは言い続けただろう。
このまま言わせば、潰れてしまう気がした。
「落ち着けって。」
優しく抱きしめ、背中を撫でてやれば乱れていた呼吸は落ち着いてきた。
「大丈夫。俺、もうリョウに怒鳴ったりとかしないし。リョウがいらないなんて考えてない。俺はずっとリョウの飼い主だ。」
『……よかった。』
リョウは溜まりに溜まっていたストレスを発散し、緊張の糸が切れると疲れて眠ってしまった。
「寝ちまった。たく、」
『(宍戸のにおいだ―…)』
「リョウ。人と同じでありたい。そう思ったんだろ?」
なぁ?
俺たちはお互いにもっと理解し合えると思うか?
俺はリョウを一人の人間として認めること出来るだろうか?
それはすべて、俺次第みたいだ――
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