act.47『本音』
(宍戸視点)
跡部の代わりにリョウを連れて歩くことになった。
意外なことにリョウと接するのは苦ではなかった。
恐らくこももで慣れたおかげ。
「すんげぇ!やっぱ空はこうでなきゃ!」
ジローと岳人が満天の星空を見てはしゃいでいた。
確かに、東京ではこんなにも綺麗で輝かしい星は見えない。
『手を伸ばせば星に届きそうだよね?』
そう言われて一瞬胸が高鳴った。
空に手を伸ばし、微笑んだ横顔が月の光でより綺麗に見えたのだ。
『宍戸は…こももと仲良いんだね?』
「まぁな。なんかいろいろしてくれんだよな。菓子作ってくれたり、料理してくれたり。」
『仁王さん…なにか言ったりはしない?』
「仁王?言わねぇな。こももが幸せならそれで良いって言うくらいだし。」
『そっか。こももは社交的だからすぐにみんなと仲良くなれるよね。』
「マナーがなってないけどな、」
マナーがなっていないとこのときは思っていた。
だけど違う。
すべてがこももの計らいだったことに気づくのはいつだろう?
「リョウは礼儀正しいから好かれるだろうが。」
『好かれてるかな?』
「ジローや岳人はまだしも、若や樺地がこんなに女に懐くなんて珍しいぜ?」
『それは仲良くなれてるってこと?』
「たぶんな、」
『……よかった。』
リョウは安堵したように、また嬉しそうに笑っていた。
このとき、リョウに対する俺の見方がかわっていた。
「……リョウ?」
『なに?』
「ごめんな。俺、おまえの存在を否定してた。」
『…………』
「犬から人間になったリョウはリョウじゃねぇって、そう思ってた。リョウが跡部に何でもかんでも聞いてて、正直ウザく思った。」
言いかったいことを言えた。
それだけで安心してはいけなかった。
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