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act.45『幻のように』
(跡部視点)


日吉に言われたことからこももを心配することにした俺は彼女を探して歩いていた。

ビーチに来てもアイツはいなかった。


「たく、どこいきやがった?」


探すのも面倒くさくなり、砂の上に座った。

携帯で連絡がつけばいいのだが。


「お掛けになった電話は電波の届かないところにおられるか、電源が入っていないため――」


これの繰り返しだ。

諦めるしか道はなかった。


『…景吾さん?』


声をかけられ、振り返れば真っ白のワンピースに身を包んだリョウがいた。

宍戸と星を見に行ったはずだがなぜここにいるんだ?


「リョウ、おまえ…」

『やっぱり、景吾さんがいないと。』


そうな風に眉尻を下げて言うリョウが幼い子供のように見えた。

ふと笑いが漏れた。


「来いよ、」


手招きしてやれば先の表情が一変し、嬉しそうに微笑んで近づいてきた。

股の間に座るように促すとリョウは素直に座った。

抱きしめるとリョウから優しくベビーフローラルの香りがした。

安心しきっていると鼻で笑うような笑いが聞こえて体が強ばった。


『騙された〜』

「ま、まさか…」

『そのまさか。ごめんね景吾さん?』


リョウだと思っていた人物はこももだったようだ。

慌ててこももから手を離し、逃げるように立ち上がった。


「なんでここにいんだよ!!」

「え?だって探してくれてたんでしょ?」

「そうだ。が、なんでリョウと同じ匂いがすんだよ!!」

「リョウちゃんの服借りてきたからね?あとシャンプーとか?」


この女、油断ならないと改めて思った。

自分のリョウを見分ける力不足かリョウを思う気持ちが弱かったのか。


「こももに騙せない人間なんかいない。」

「……はぁ、」

「残念だったね?」


楽しそうに笑うこももになにも言い返せないのが悔しかった。

リョウだと思っていたのがこももだったということは先のことはすべて嘘になる。


「(リョウが来てくれたと思ったのに、)」


そんなことを思い返して肩を落とす俺がいた。





あきゅろす。
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