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act.5『跡部の悪戯』


それはクッキーだったらしく、リョウの興味を引くにはもってこいだった。


「食うか?」

『わん!』

「ふん。なら、くれてやるよ。」


投げられたクッキーを見ると目を輝かせたリョウと真っ青な顔をした長太郎たち。


「アカン、食べたらアカンて!」

「奪い取れぇ!!」


彼らは跡部が投げたクッキーを奪おうとするが犬のどん欲さに勝てず。


『(もぐもぐ、)』

「「「あぁぁぁ!!」」」

『(ごくんっ!)』

「「「………………」」」

「ふはははっ!」


一人高笑いする跡部を周りは目の下に青筋を入れ、虚ろな目でリョウを見ていた。


「お隣のおばさんトコに行ったらお裾分け、って鮭貰っちまったぜ。……どした?」


みんなの様子を見て俺は疑問符を浮かべた。


「俺知らねぇかんな跡部!」

「は?」

「後でどんなことになってもな。」

「は?なに、なんか跡部がしたの?」

「ふん、愚問だな。俺はすべて宍戸の為にしてやったんだよ。な、樺地。」

「ウ、……ウス。」

「樺地が困ってるやんか(汗)」


みんなの会話を理解できなくて俺はひとり疑問符を浮かべるだけだった。





みんなが帰ると賑やかだった部屋がシンと静まり返る。

このギャップが怖くて部屋の隅でうずくまった。


『く〜ん…』


ピッタリ俺にくっついてきたリョウに“私がいるから大丈夫だよ”って言われた気がした。


「そうだよな。俺、もう一人じゃなかった!」

『わん!』

「よっしゃ、寝るぞ!」

『わん!』


その日、それから何事もなく――と思ってるの俺だけらしい――夜を迎え、そして朝を迎えた。


「リョウ、飯だぜ!」


パタパタ尻尾を床にぶつけながらお座りをして待つリョウ。


「うちの犬は利口だな。それに比べて仁王んちの犬は……」


仁王の連れて帰った犬はかなりしつけが大変だったらしい。

近いうち、会わせてやろうと約束している。


「あ、やべぇ、こんな時間!リョウ、俺学校に行ってくるな!」

『くーん…』

「帰ってきたら遊んでやるよ。じゃあな!」


ジッと潤んだ瞳で見つめてくるリョウから逃げるように家を出た。

俺が学校に着くとまず出迎えたのは跡部だった。





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