act.43『そばにいてやりたかった』 (跡部視点) 険悪なムードをさらに悪くするように周りから非難の声があがる。 「こもも、そんなこと言ってリョウを困らせんなよ!」 「リョウはおまえと違って飼い主(宍戸)も必要なんだよ!」 「それはただの欲張りじゃん?」 そう冷たく言えば宍戸がこももの腕を引いて脇に連れていった。 「いいかこもも。リョウに関わるな、」 「思ったことを言ってなにが悪いの?」 「人のことも考えて言え。」 「リョウちゃんはハッキリ言わなきゃわからないタイプだよ。誰かが言わなきゃあの子は自分の過ちに気づかないよ?」 「知ったような口を利くな!」 ついに限界に達した宍戸が声を上げた。 こももは言葉をこぼして去っていった。 「こもも……ッ、クソッ!」 近くに生えていた木に八つ当たりをし、宍戸はその場に座り込んだ。 “宍戸くんだってペットさえいれば、他人のペットなんかいらないってこといつになったら気づくの?” 忍足たちは少ししょげているリョウを慰めていた。 しばらくすると宍戸が立ち上がるが俺はそれを止めた。 「アイツは任せとけ、」 「……なんでおまえがこもものとこに行くんだよ。」 「今のおまえならこももを傷つけて終わりだ。」 「おまえまで偉そうな口利きやがって…!」 「なら言うが、こももを慰める自信があるのか?」 「ッ、……ある。」 「ふん、真実の口にでも手を入れてこいバーカ。」 嘘をついている、と言いたくてそう言い、俺は宍戸を置いてこももの元へ向かった。 見つけたとき、彼女はビーチにいた。 その背中は寂しそうだった。 「こもも、」 「……うまく行かないよね。さっさと気づけば良いのに。」 「…………」 「宍戸くん、知らないだろうけど…たまにリョウ?って寝言を言うの。自覚ないなんて疎(うと)すぎ。」 「こもも、おまえ…」 「リョウちゃんにも発破掛けて来ちゃった。いつか謝らないと、」 そう言い、遠くを見つめているこももの隣に腰を下ろした。 「いつか、っていつだよ?」 「リョウちゃんやみんなが本当に幸せになれた時。ごめんね、って言うつもり。」 「その時、こももが不幸でも言えるのか?」 「うん。みんなが本当に幸せならそれで良いの。」 「こもも……」 「それにこももは不幸なんかにならないよ。幸せなみんなを見てるだけで幸せになれるから、」 そう力なく笑ったこももを見て泣きそうになった。 なんてこももは利他的なんだろう、と感じると急に自分を恥ずかしく思った。 「景ちゃん、自分を責めちゃダメだよ?」 「あん?」 「リョウを人間にしたから、とか俺がリョウを好きになったから、ってね?」 こももは立ち上がり、砂を払いながら言った。 俺もそれを見て立ち上がった。 → |