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act.41『私が姉です』
(跡部視点)


リョウは確信付いただろう。

だから俺は宍戸の彼女についてはなにも言えず、リョウを見ない振りをするしか出来なかった。


「なにに驚く必要がある?コイツ、うちに一回来ただろ?」

「あ、例の件?(笑)」


化けていたとも知らずにあっさりと騙されたあの日。

俺が騙されるなんて余程、仁王に仕込まれたと見える。


「あの時、コイツらに会わなかったのか?」

「うん。宍戸くんに玄関で待つように言われたんだけど、あまりにすごい家だからつい探索したくなってね。たまたまリョウちゃんの姿を見て悪知恵が働いたってわけ☆」

「そんな説明はいらない」

「それは残念、」

「ちょ、どういうことなんか説明して?」

「俺も理解出来ません。」

「跡部さん、彼女はリョウさんと縁(ゆかり)ある方なんですか?」


忍足と日吉、鳳が俺に説明を求めた。

俺は簡潔に仁王の愛犬だ、と述べた。

仁王と聞いただけで周りはあまり反応がよくなかった。


「リョウとは兄弟(姉妹)になる。リョウに飲ませた薬と同じものでこうなってる。」


皆があーなるほど、と口を揃えてリョウとこももを見比べていた。


「こももと言います。よろしくお願いします。」


柔らかく笑うこももを見て、少し警戒心も薄れたかと思われた。

しかし、やはり仁王の愛犬だと思わせる事態へ話は展開していく。


「じゃあ、なに?俺と侑士がこないだ遊びに行った時にリョウだと思いこんでたヤツがこももだったってわけ?跡部あの後すんげぇ怒ってたじゃん?」


先の俺とこももの会話を思い返し、意外にも理解していたのは岳人だった。

見たからにアイツはそういうことに鈍そうだしな。


「あらまぁ、気づかんかったわ。仁王にこんな愛弟子がおったなんて、」


無邪気に笑いながらVサインを二人に見せるこもも。

変装は得意だよ、と笑うこももとは違い、複雑そうに表情を歪めるリョウの姿があった。


「(……リョウ、)」


宍戸とこももが繋ぐ手を見てか。

指まで絡めているとなればふつう、恋人同士にしか見えない。

現に俺たちも指を絡めることが多い。


『こもも、』

「久しぶり、リョウちゃん?」


リョウが警戒しながらこももに近づいた。

それに対し、こももは罠にかかった獲物を見て鼻で笑う、質の悪い捕獲者のようだった。





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