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act.39『恋をするとは』
(宍戸視点)


こももといるとイヤなことは忘れられる。

理由はわからないがふと自分を惨めに思うときもある。

でも、こももが幸せだ、と呟く度にその感情は忘れられた。


「はぁー…汗かいたからお風呂入りたい。」

「明日でいいだろ?」

「そう?」

「だからもう一回!」

「きゃあ!」


俺はいつから不埒になったんだろう?

すべてはこももに仕込まれたことなんだけど。


「いきなり押し倒すんだからぁー」

「悪い悪い、」


こももの体に触れていると自分の芯が熱くなっていく。

こももの仕草一つ一つが目に留まり、見ているだけでは満足できなくなる。

そして、気がつけばこもものことを考えてる自分がいる。

こういうのを“好き”っていうのだろうか?

わからないことが多くて混乱する。


“こももと恋愛ごっこしない?”


なぜ俺に恋愛をするよう求めなかったのか。

彼女の考えがそのときはわからなかった。


「すごい汗かいた〜」

「気にすんな、俺もだから。」


こももと会って俺は変わってしまった。

だからといって、ただ欲を満たすだけの仲じゃないということはわかる。



ある時、仁王とこももと三人で街を歩いていたときに俺らを見た周りの人間が言っていた。


「隣の人彼氏かな?」

「え?でも白い髪の人とも手繋いでるから友達かもよ?」

「どっちかが彼氏とか?女の子すごい美人だから三角関係とか?」

「あーでも、どっちが相手でも恋人同士に見えるね。」


一般人の感覚からするとこういうは恋人という関係に当たるのかもしれない。

でも、こももは違うと言う。


「雅治とセックスくらいするもん。セックスだけが恋人の印じゃないと思う。」

「なんで仁王とするんだよ?」

「んー…たぶん好きだから。」

「じゃあ、俺となんですんの?」

「好きだから、」


曖昧な答えだけどこももが俺を好きでいてくれてることはよくわかってるつもりだ。


「あ、言っとくけど、宍戸くんといるようになって雅治とはしてないよ?」

「ふーん?仁王はヤキモチとか妬かないわけ、」


そう聞いてふと思った。

仁王が言ったように俺もリョウに対してそう感じるのがベストなんじゃないかって。

だけど、こももはまた違うと言った。


「雅治にとってこももは大事な家族。宍戸くんにしてもリョウちゃんは大切な家族。それは変わらないよ?でも、」


言葉を詰まらせてから言った言葉はジンと胸にきた。


「リョウちゃんは宍戸くんの唯一の家族。それが違うの、」


リョウに対して俺はどう思ってるんだろう?

俺はこももが隣にいて幸せだと思ってるはず。


「リョウと仲直りしろって言いたいのか?」

「してくれなくてもいいよ?宍戸くんはこももだけ見てればいいの〜」


そう言って笑っていた。


こもも、おまえは初めから気付いてたんだな?

最終的に傷つけることになるなんて俺は思いもしなかった。


「二人とも!起きなさい!!」

「佳梨にぃうるさーい、」

「カーテンと窓を開けて空気を喚起しなさい!あ――!!」


翌朝、布団を汚した!と佳梨にぃに二人で起こられる。

こんな日常がダラダラと続くと思っていたのは俺だけだったのかもしれない。





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