act.38『その日が来るまで』※
(こもも視点)
呆れながらまたかよ、と言われたけど気にしない。
丸めた服を頭の下に敷くと宍戸くんのにおいがして安心した。
「宍戸くんのにおい好き、」
「そんなに好きなら嗅がせてやるよ。」
布団に入ってくるなりすぐに抱き寄せてくれた。
過激なことにも慣れてしまったみたいで彼は最近、前に比べるとあまり恥ずかしがらなくなった。
「宍戸くん?」
「なに?」
「好き、」
「…………」
「でも今日はごめんね。景ちゃんと和解できて単純に嬉しかっただけなの。」
「わかった、もうその話はいいって。」
そう言われて安心した。
宍戸くんの体にキスを一つして、また違うところにもキスをすると上からくすぐったいと言われた。
パンツしかはいてないこももたちが続きの行為に移るにはたやすかった。
「宍戸、くん…」
「…なに?」
「大好き。」
「さっきも聞いたっつの、」
口では適当にあしらわれるけど本当は優しいことを知ってる。
そんな宍戸くんがこももは大好きなの――
「聞きたくない?」
「いや、そうじゃねぇけど。」
「なら言わせて?」
これはリョウちゃんへの当てつけ?
自分のことしか考えてないのかな?
でも、宍戸くんが苦しんだようにリョウちゃんも景ちゃんもこもももみんなが苦しめばいいと思う。
「ッ、あ…ん、」
リョウちゃんが苦しんでいることで景ちゃんも苦しんでる。
まるで連鎖反応。
この世になにが正しいか、初めから理解している人間はいないんだから仕方ない。
みんなが間違いに気づくにはこうするしかないと思った。
「ひゃあ!」
「ごめん、我慢でき…ない。」
だけど計算ミスをした。
「ん、や…あっ、ダメぇ、」
悪いのはこももだから誰も責めちゃいけない、と必死で言い聞かせる。
景ちゃんがリョウちゃんを奪ったからとか、宍戸くんが意地っ張りだからとか、そんなんじゃなくて。
“恋愛ごっこ”なのに半ば本気でいるこももが悪いの。
最終的な誤算はすべて償う。
だからどうか宍戸くんが幸せになりますように。
「し、…しど…くん…」
「あ?気持…ちかった、か?」
「うん、す…ごい幸せだった。」
自分を押し殺さなくてはいけないその日まで、許してください。
こももは“詐欺師”として自分を装わねばならないことを知っているから今から心を泣かせてはいけない。
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