act.37『子羊と狼』
(こもも視点)
貸してくれた部屋へ行くと宍戸くんがテレビを見ていた。
静かに近寄り、背中に抱きついた。
「なに見てるの?」
「つまんねぇから適当にチャンネル回してるけど…やっぱつまんねぇんだよな。」
そう言った宍戸くんの髪を撫でながら肩口に頭を置いた。
「今日泊まっていかない?佳梨にぃ部屋貸してくれたの。」
「マジかー」
やる気がない返事が返ってくると宍戸くんはテレビを消してリモコンを投げた。
「ね、話があるんだけどね?」
「ん?」
「景ちゃん、プライベートビーチに行くって言ってたじゃない?」
「あ、あぁ。」
「こももも行きた「ダメ!」
「なんでー!?」
「また跡部に浮気されたまたまんねぇもん。」
「……やっぱりヤキモチだったんじゃん!」
「はいはい、ヤキモチですよ。」
突っ張りながらそう言った宍戸くんが子供みたいで可愛く見えた。
しかし、ここで手は出さない。
「ダメって言われても行くもん!」
ダメと言われる度にこれで一点張り。
すると彼は次第に諦めていくことをこももは知っている。
「はぁー…行きたきゃ行けよ。」
「え?一緒に行かないの?」
「行かない。」
即答か、と心中で突っ込んだ。
解りきってた答えたけどやっぱり残念に思った。
「狼だらけの中にこももを一人でいさせ気?」
その質問の答えに困ったようだけど長いため息を吐くと“ついていけばいいんだろ?”と答えた。
こももが大事かどうかは別として、狼だらけの中に羊を投げ込むことは出来なかったんだろう。
「ある子羊は一匹の狼になら食べられてもいい、と身を差し出すの。」
「バーカ、」
ふっ、と鼻で笑うとこももを抱き上げ、布団に投げ入れた。
宍戸くんは部屋の電気を消すと服を脱ぎ始めた。
音を聞いて理解し、自分も服を脱いだ。
「これ着ろよ、」
佳梨にぃの家にはよく来るから服をいくつか置いてある。
でも宍戸くんが親切にいつもシャツを渡してくれるのが嬉しくて、タンスから服は出さない。
「着るなんてもったいない。枕にする!」
そう言いながら丸めているとため息を吐かれた。
枕にしちゃダメなわけ?
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