act.1『悲劇』 (宍戸視点) 出逢い、そして別れ、 俺たちは成長した。 もちろんリョウ、おまえもな――― 犬も歩けばラヴ… 俺、宍戸亮は中等部3年の冬、事故に遭った。 「――ど、宍戸ッ!」 「しっかりしてください、宍戸さん!」 ふと目を覚ませば、見慣れたメンバーが涙を流し、俺を揺すっていた。 状況が把握できない俺はぼんやりとみんなを見ていた。 「…んで、泣いてんだよ?」 「宍戸さん!!」 「宍戸!俺らのことわかるか!?」 赤い髪が俺の顔にかかるくらい顔を接近させて岳人が言う。 「近ぇーよ、岳人。」 「よかった!記憶は大丈夫そうだ。」 複雑そうに顔を歪めた岳人を見て俺は思い出した。 事故に遭う瞬間を――― 「あなたぁ!」 「くっそ!!」 「きゃああああ!!」 ―キィィィィ そして、思い出した。 愛する家族のことを――― 「か、さん……岳人!俺の母さん父さん兄貴は!?」 「そ、れが…さ……」 言葉を詰まらせたまま、岳人は俯いた。 口を開きそうにない岳人に苛立ち、舌打ちしてジローを半ば睨みながら見上げた。 「ジロー!あの後どうなったんだよ!!」 「いや…その……」 誰も口にはしない。 俺は家族が良い状態ではないと悟った。 この目で確認するため、事故のせいで痛む体に鞭打ち、ベッドから身を起こした。 「アカンて宍戸!まだ良うなってへんのに「うっせー!黙ってろ!!」 心配してくれた忍足に八つ当たりし、支えてくれようとした手を払いのけた。 俺の視界に困った顔をして跡部に目配せする忍足が見えた。 「宍戸、一度しか言わねぇからよく聞きな。」 「跡部さん!」 「いい、いずれわかっちまうなら今言った方が楽になれるだろ。」 若と跡部のやり取りに多少の疑いを持ち、耳を傾けていた。 「宍戸、おまえの親父さんと兄貴は―…」 最悪だ、こんなことってない。 「即死だったらしい。お袋さんはさっき、息を引き取った。」 俺を“亮”と呼ぶ人が誰一人としていなくなった。 この日、このとき、テニスでレギュラー落ちしたときとは全く違う苦しみを味わった。 絶対に立ち直れないと思った。 → |