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好きと好きの狭間
(仁王視点)


黙っていれば、このままずるずると引きずるような関係が続く気がしたから賭に出た。

真衣の人生を揺るがす賭。

と言っても俺は真実を述べただけなんじゃけど。


「話あるんじゃけど、今平気かのう?」

『平気だよ。』

「じゃ、デートがてらドライブせん?」

『デ、デート?』


恥ずかしそうにそして困ったような表情を浮かべた真衣に俺は嫌とは言わせんかった。


「堅くならんくていいん。な?」

『…うん。』


了承を得、俺は真衣を連れて出かけることにした。が、出かける寸前に跡部に出会った。


『…あ、景吾くん。』

「よお、真衣。……に、仁王。」

「なんで東京の大企業のご子息がこんなところに?」


嫌みを含んで挨拶した言葉を軽く弾き、跡部はこう返事した。


「真衣に用事がある。」

「妹に手出したら容赦せんよ?」

『はるにー…』

「てめぇにそんなこと言う権利があんのか?」


跡部は口の端を上げて笑っていた。

真衣はこの場をどう和めればいいのかわからずあたふたしていた。

じゃけ、残念ながら跡部、俺ん勝ちじゃ。


「本当は妹になるはずだったん。」

「あーん?」

「丸井家に引き取られるまではのう。」

『ど、いうこと?』

「今は正真正銘、俺ん妹じゃ。戸籍上、仁王真衣なん。」


絶句している二人に俺は淡々と告げた。

真衣は俺ん母方の血筋で母の兄の娘、俺のいとこの娘が真衣だということ。

育児放棄した真衣の母親のことを聞いた両親が真衣を引き取るために東京に越してくることを決意したこと。


『うそ。じゃあ……』

「紙(ペーパー)上からすると真衣は俺ん妹なん。」

「そういう話、マジであるんだな?」

「丸井家とうちの両親の話し合いの結果、丸く収まったとか。そのあたりはよくわからんけど、」


娘・養子として引き取ったのは仁王家、育てるために引き取ったのは丸井家。

将来のことを考えて苗字はそのまま廉生にしておくことにしたが俺ん家族には変わりない。

真衣を可愛がっていたブンには本当のことが言えず、影から見守ることにした。

時たま姉貴が真衣の学校を訪れていたのも、弟が真衣と下校時重なっていたのもそのせい。

俺がブンと仲良くなれたのは偶然じゃったが丸井家に引き取られたため、真衣の情報を自然と得ることが出来た。


「ずっと影から見守うとったんじゃ。」


ブンがこの地を発った今も。

真衣が俺を友達のように感じていても良い。

ただ、慕ってくれるのなら。


「こんな形で話すことになるとは……悪かったのう真衣。」

『もしかして、今日はそれを話すために…?』

「悪かったな、俺が邪魔したようだ。」

「いや、おまえさんが真衣を可愛がる兄貴分であるなら問題なかよ。」


初めは本当の家族ではなく、パピーウォーカーのような家族に真衣をとられて拗ねた。

じゃけ、ブンが真剣に真衣を家族として愛していることを知ったからなにも言えんかった。


「真衣。俺は今も真衣の“はるにー”なんじゃ。」


共に暮らしてなくても、事実を知らなかったときも家族には変わりない。

今は丸井家との繋がりを否定はしない。

それによって俺はブンが家族のように思えたから。

親友と呼べる友達に出会うことになったから――





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