絆に亀裂が生じた
小学校1年生になったばかりの真衣は俺の親の意向ですぐに神奈川第三小学校に通わせた。
ちなみに俺の母校。
「真衣ー学校楽しいか?」
『うん!おともだちもできたの!』
「よかったなー?」
登校は一緒。
しかし、真衣を学校帰りに迎えに行くことは出来ず、下校時は母親に任せきりになった。
「あれ、仁王帰るのか?」
「用事済ましたら部活に戻るん。部長には伝えたから心配せんでいいぜよ。」
「了解ー」
あれは1年の最後の時期だった。
時たま仁王が部活前に抜け出して用事を済ませて部活に合流することがあり、気になって仕方なくなった俺は仁王をつけた。
「雅治ー!」
「お、姉貴。なにしとん?」
「こっちの台詞やし。なに小学校付近彷徨(うろつ)いとうの?真衣と雅暁ん様子でも見に来たとか?」
「まぁ、んなところ。」
話に聞いていた高校生で仁王の姉・由紀恵さんは予想以上に綺麗な人だった。
きっと、会話に出てきた雅暁(まさあき)というのは小4だと聞いていた弟のことだろう。
「(でも、なんで真衣?)」
謎が多すぎて怖い。
真衣には俺を通さずに会ったりしているのだろうか。
真衣となんの関係があるのか。
「……帰るか。」
結局、時たま真衣の様子を見に行っているとわかり、引き上げてきた俺はわだかまりを持ったままその日を終えた。
『ぶんたおにいちゃん、』
「……」
『ぶん、た…おにいちゃん?』
「ん?あ、なに?」
『えほんよんで?』
「いいぜぃ。持って来いよ。……て、この本これどうした?」
『くれたの。』
「誰が?」
『はるにーのおとうとのひと。あきくんが。』
それからの話だが真衣のために、と仁王が物を渡してきた。
前に仁王の弟から絵本をもらって帰ってきたことで真衣を叱ったことを知ったから俺を通して渡そうとしたのだろう。
きっと、部活が本格的に始動したし、真衣に会いに行くなんて余裕ぶっこいてられなくなったんだろう。
仁王なりに気を使ってのことだったのかもしれないが…俺にしたら余計なお世話だった。
「丸井、これ真衣に渡しておいてくれん?約束してたDVDなん。」
「……で……てに、」
「なん?」
「なんで勝手に真衣に世話焼いてんだよ!真衣は仁王の妹なのかよ!」
それを機に仁王と会話する事がなくなり、2年生になってクラスが別になり、顔を合わせることもなくなった。
部活では仁王は準レギュラーに入ったから練習メニューやコートが違った。
『さいきん、はるにー来ないね?』
「…どうしてんのか知らねぇな。」
『ケンカしたの?』
「なんでそう思うんだよ?」
『だって、元気ないし。あきくんがケンカしたのかな?って言ってたし。』
真衣にそう言われる前から気にはしてた。
俺だって仁王といて楽しかったし、友達になった奴だったし。
『さいきんテニスぶは?』
「あー。幸村くんに言われた。体力不足なのがもったいないって。」
『そうなんだ。あ、ママがケーキかってきてくれたの。たべよう?』
「そうだな。コウ太呼んでこい?」
『うん!コウ太ー?』
真衣は母親からお菓子を与えられたことがなく、うちに来てお菓子を食べてお菓子、特に甘いものが好きになった。
それが俺のテニス部でレギュラー入り出来るきっかけになった。
そして仁王と仲直りするきっかけになった。
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