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ヤキモチ妬き


確かによくよく思い出せば、いつも俺の周りには仁王がいて、真衣と散歩するにしても、買い物するにしても、遊ぶにしても必ず仁王がいた。


「仁王仁王ー!」

「なんじゃい。耳元で騒ぎなさんな。」


俺に妹という存在が出来たことを一番に報告した相手は仁王だった。

新しく出来た友達に俺はそれなりに懐いていたのだろう。


「俺、妹出来た!」

「丸井のママが生んだんか?」

「いや?」

「じゃあ、丸井のパパが?」

「バカ言うな。うちの父さんは真衣のこと“養子”つってた。」


このとき、仁王の眉毛がぴくりと反応を示したことに俺は気づかなかった。

まさか、そんな背景があると思わなかったからだ。


「今なんて言うた?」

「は?だから養子、」

「養子やのうて、その妹ん名前!」

「…真衣、だけど?」


必死な様子で俺に問い尋ねてきた仁王に若干、圧倒されてしまった。

奴は名前を聞くと目を伏せて口を開いた。


「真衣て、廉生真衣じゃろ?元気にしとう?」

「え?あ、あぁ。」

「そんならよか。」


仁王が俺に見せた必死な様子はこれが最初で最後だった。

ところで俺は仁王がなぜ真衣を知っていたのかという疑問を解こうと考えたわけだが、そうなる前に仁王が真衣に会いたいと言い出した。

特別、断る理由もないため仁王を家に連れていった。


「真衣ー?」


玄関から名前を呼ぶと家の奥からパタパタと子供らしい走り方をした真衣が迎えてくれた。


『ぶんたおにいちゃん、おかえりなさい!』

「友達連れてきたんだ。」

『おともだち?』

「元気しとう?」

『!』


真衣の見上げる視線と仁王の見下げる視線が交わったとき、空気が一瞬凍ったように感じた。

俺はなにか事情がある、とは思ったが真衣を守るのに必死だった。


「仁王なんでおまえ、真衣を知ってんだよ!」

『……はるにー』

「え?」

「しゃんと生きとった。心配しとったんじゃ。」


真衣は仁王に飛びつき、仁王もしっかり真衣を支えている。

まるでその場に俺がいないかのように話が進んでいく。

疎外感が襲う。


『あのね!はるにーはまいのおともだちなの!』

「は?」

「そうそう。お友達なん。」

「はぁ?」


他人に興味なさげな仁王に友達。しかも、こんな小さい子が。

信じられなかった。

でも、よくよく考えれば真衣に初めて会ったとき、確かに“はるにー”と言っていた。


「そっか…丸井んちにいたんか。」


真衣の頭を撫でて、一瞬だけ滅多に変わらない表情が変わった。

寂しそうな、残念そうな、辛そうな表情を見せてすぐに力なく笑った。


「よかったのう。」

『うん!』


先の車の中で聞いた通りなら仁王は真衣がアタックしたという。

それが本当ならいつから?


「仁王、真衣といつから知り合い?」

「春休み入ったときくらいからじゃ。」

「そうか…」


真衣と知り合ったのは仁王の方が早かったと知ってあまりいい顔はしていなかっただろう。

仁王がふと笑ったからだ。


まだ真衣に出会ってほんの数日しか経っていなかったけど、俺はすでに真衣を妹として見ていたんだ。

仁王いわく、それなりにヤキモチを妬いていたらしい。

知るかよ!





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