[携帯モード] [URL送信]
9>>Under lover.



次の日曜日、俺は待ち合わせの場所に約束の時間前に来た。

早く着きすぎたか。

しかし、それは陽奈も同じだったらしい。


『仁王くん!』

「あ、おはようさん。」

『おはよう。早いね?』

「待たせるん申し分けんしね。」


そう言えば陽奈は目を細めて笑った。

同じことを考えていたらしい。


「映画見るんじゃろ?」

『うん。ワンちゃんのお話なんだけど…仁王くん犬好き?』

「うちにも犬がいるんよ。」

『それならよかった。』


二人で会話を弾ませ、映画館に向かった。

日曜日ということもあり、開場待ちしとう人はカップルばかりじゃった。

周りから見たら俺らもその一組に見えるんじゃろうが実際は恋人に至っていない。


『仁王くんの飼ってる犬ってどんな子?』

「……」

『仁王くん?』

「え?あ、なんじゃ?」

『もしかして具合悪い?』

「あ、いやいや違うん。」

『それならよかった。』


俺が体調悪いと勘違いした陽奈は俺の返事を聞いて安心したみたいじゃ。

陽奈を心配させて、俺はなにしとんじゃ。


『あ、開場だって。』

「そういやチケット、」

『友達から前売り券もらってね?』


女に任せきりなんて、なんか格好悪いのう。

昼は奢ってやろうと心に決めた。


映画館に入り、照明が落とされ、暗くなると画面からの光で陽奈の横顔が見えた。

ずいぶん真剣に見入っているらしい。

しかし、その表情はあっと言う間に変わった。


「(……泣いとうし、)」


感動してか、泣いていた。

映画の途中じゃけ、俺は陽奈ん前に手を伸ばし、涙を拭った。


『っ!…ごめん、』

「泣き虫さん。」


陽奈の頭を軽く撫でてからまた画面を見た。

映画を見て泣いている陽奈の横顔は小さな子供のように見えた。


映画が終わると陽奈はすぐに俺の顔色をうかがい、謝ってきた。


『さっきはごめんね?』


しかし、俺は謝られるようなことはなにもしていないわけで、頭に疑問符を浮かべた。


「なんも?可愛かったからいいんじゃなか?」

『!』

「はは、照れなさんな。」

『もう、仁王くんのバカぁ…』


自分の赤く染まる頬を手で隠す、その仕草は可愛いものだった。

しかし、俺はいつまでも陽奈に気まずい思いをさせたくなくて話題を変えた。


「さぁて、飯食わん?パスタ平気?」

『パスタは好き。』

「よかった。なら行くか。」


俺は心に決めた通り、陽奈に昼をご馳走すると話して店に入った。

よく来る、パスタの店に。


「いらっしゃいませー仁王先輩?」

『…仁王くん、知り合い?』

「あ、噂の仁王先輩の彼女?」

「んー残念ながら違うん、」

「えーマジっスかー?」


その店でバイトをしていた赤也が俺らを見て、関係を疑いながらテーブルに案内してくれた。

残念ながら、友達以上恋人未満の関係なんじゃ。


「お似合いなんスけどねー…メニュー決まったら呼んでくださーい?」

「おまえさんなぁ?俺、一応客。」

「あはは、すいませんー」


赤也がメニューを置いてその場からいなくなったのを見て俺は陽奈に言った。


「アイツは中等部時代からの後輩なん。テニスで共に戦った仲間じゃけ。」


そう言って顔を上げ、陽奈を見て俺は静止した。

彼女は口元を隠し、顔を赤らめていたんじゃ。


『ご、ごめん。なに食べようかな〜?』


陽奈はメニューを見るようではあったがあれはたぶん顔を隠すために誤魔化していただけじゃろう。

期待、していいんかのう?




[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!