2>>An encounter.
そんな俺は今日も仕方なくではあるが交差点を歩いている真っ最中。
人が行き交う中、人を縫い(避けて)歩いていた。
時には肩がぶつかるときもある。
「(人多すぎじゃ、)」
人の多さに嫌気がさして溜め息を吐いたとき――また、人にぶつかり、相手の持ち物が道路に散らばる音がした。
『す、すいません!』
「いや、俺ん方こそ前見とらんくて…」
声からすると相手は女じゃった。
落としたものをすぐに拾いにかかり、相手を見て俺の手は止まった。
彼女になにか心惹かれるものがあった。
『あ、信号が…』
信号が点滅し、再び赤になるとあれだけいた人間も道路上から姿を消す。
俺は彼女の手首を掴み、歩道まで慌てて導いた。
俺ら二人が歩道に来るなり車がひっきりなしに通った。
『拾ってくださってありがとうございました。』
「ふつうはぶつかっといて素通りなんかせんよ。」
『助かりました。』
彼女に拾った手帳やポーチ、携帯を手渡した。
それを鞄に入れていく彼女に足りないものはないか尋ねた。
『……鏡がない、』
「鏡?どんくらいの大きさのやつ?」
彼女は自分の指で大きさを示した。
歩行者信号が青に変わるのに気づいた俺は彼女にこの場で待つように頼み、再び道路へ向かった。
ぶつかった付近まで来て、足下を見て歩いた。
「あった、」
聞いた情報と一致するものを見つけ、拾い上げたはいいが車に踏まれて割れとった。
申し訳なく思いながら俺は拾えるだけ拾い、彼女の元へ持ち帰った。
『割れちゃってましたか、』
「悪い。俺んせいで、」
『あなたのせいじゃないですよ。いつかは壊れるものですし。』
そう言って彼女は俺を許してくれた。
じゃけ、俺ん気が済まんかった。
「今急いどう?」
『え?平気です。』
「弁償さしてくれん?」
『そんな、気にしないでください。』
「俺が壊したようなもんじゃ。償いたいん。」
『…優しいんですね。じゃあ、お言葉に甘えて。』
彼女は目を細めて嬉しそうに笑った。
彼女が俺の気持ちに応じてくれたことが嬉しかった。
不思議となにか彼女にしてあげられことで胸がいっぱいになったん。
『割れてしまったそれは私が持って帰りますね。』
「あ、あぁ。」
割れた鏡は折り畳み式のもので鏡にはプラスチックの薄いカバーがついとった。
なんとなく破片すべてを渡してしまうのが惜しくて、一つの欠片を彼女に見えないように手中に納め、手渡した。
「どこに行けばそういう鏡売っとう?」
『雑貨屋さんですかね?そんな高価なものでもないし、どこにでもあると思いますけど…』
「もし良かったら鏡、選んでくれん?俺、好みとかわからんし。」
『今ですか?』
「今でも平気なら今で、連絡先教えてくれれば今度でも俺はいいぜよ。」
『せっかくだから今お願いします。あ…えっと、』
彼女のことを察して口にした。
「俺は仁王雅治、」
『……なんで聞きたいことがわかったんですか?』
「なんとなく、」
『仁王くんは制服からすると立海?』
「高等部3年、」
『見た目が大人っぽいから高校生に見えないな…』
ふと控えめに笑う彼女が大人っぽく見えた。
その瞬間、俺よりも5つくらい上に見えたために彼女に対する言動を後悔した。
「俺よりずっと年上じゃよな?なのに俺…」
『敬語のこと?別にいいの。親しんで話しかけてくれるならそれで、』
優しい気遣いに気持ちが暖かくなった。
『私、三橋陽奈。よろしくね、仁王くん。』
そんなあたたかい女性(ひと)との出会いが20××年の春にあった。
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