既存
しかし、それからパタッと景吾は私に絡んでこなくなった。
授業中、顔を上げもしない。
だからと言って声をかける勇気はなかった。
『(やっぱり股間蹴りあげたのがまずかったかな?)』
そう思ってはいても行動に移そうとはしなかった。
たかが生徒一人だ、と考えてた。
それから月日が経ち、ある日の休み時間に屋上に一人でいた時だった。
「明良さん、」
元同級生兼、同僚の宍戸浩太郎の弟である亮くんが私を訪ねてきた。
私は浩太郎と仲が良かったからよく宍戸家を出入りしてた。
だから自然と亮くんとも仲良くなった。
『あ、なんだ亮くんじゃん。』
「あのよ?……跡部となんかあった?」
亮くんは私たちのことを感づいたらしい。
私にはしらばっくれるしか出来ない。
『なんでそう思うの?』
「なんか跡部、元気ねぇからさ?」
『跡部くん、真面目になったよね。授業中大人しいし。』
「……元気がないから大人しいんだろ?」
『でもしょうがないじゃん?生徒一人のために私になにが出来るの?考えるだけで時間が無駄。』
「……そっか、」
私はその時の亮くんの友達を思う故か寂しげな顔を忘れないだろう。
『なんで跡部くんと何かあったと思うの?』
「……なんとなく。」
『ふーん?』
「跡部からなにも聞いてないのか?」
『うん、』
「跡部に告られたんじゃ「なんだ亮じゃん、」
『浩太郎……いつ来たの?』
「今、」
浩太郎が突如現れると亮くんは口を閉じた。
『で、なにしに来たの?』
「えー…用もなく屋上に来ちゃ悪いのか?」
『そうは言ってないじゃん?』
「…したら俺、帰るわ、」
『あ、うん。またね亮くん。』
亮くんはまるで浩太郎が来たから慌てて逃げたようにも見えた。
亮くんを見送ってから、視線を浩太郎に向けると優しく笑っていた。
「なぁ、今夜開いてるか?久々にどうよ?」
『あー…悪いけどやめとく。最近体調よくなくて。』
「残念。でも今度みんなで――」
浩太郎の話を聞いている最中、いつの間にか意識を手放していた。
「明良!!しっかりしろよ!!」
そして、いつの間にか一人の生徒を気にかけて気持ちが揺れていた。
『……あ、とべく…ん……』
知らぬ間に好きになってしまったのかもしれない。
「跡部、ね…」
目の前にいたのは浩太郎なのに私が見たのは彼ではなく、景吾だった。
「この展開は納得いかねぇ、」
私は考えすぎて頭がパンクしたようだ。
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