[携帯モード] [URL送信]
 教師歴半年


学校の雰囲気や授業をすることにも少し慣れた頃、噂立った。


“跡部様が教師にマジならしい”


しかし、そんなくだらないことにいちいち私が気に留めることはなかった。


「明良先生?」


始めは生意気だった景吾も日に日に反抗しなくなった。

しかし毎回、からかわれていた。


「今日はレースの水色、」

『うるさい!』


年齢的なものもあり、生意気なのは変わらなかったけど授業はやりやすかった。


「それならお揃いで上も同じ柄だよなぁ?」

『……よし!次の文は跡部くんが読みなさい。』

「あん?なんで『読め!』


前より少し素直になった景吾は渋々ではあるが指示通りに英文を読み始めた。


「……で?いつまで読ませるんだ?」

『ずっと、』

「はぁ!?」

『よし、じゃあ、みんなは教科書12ページを開いて〜』

「オイ!!」


そんなやりとりがある授業を毎回楽しみにしていた。


しかし、1年の後期になると景吾との接触は英語の授業だけではなくなった。

生徒会の委員会の担当を新米の私になぜ校長は任せたのだろう。

“君ならできる”と期待を受けた私はとにかく必死で委員会に取り組んだ。

そのとき、生徒会の書記には景吾がいて、さらに彼のことをよく知るようになった。


「じゃあ、跡部。最後頼むぞ。」

「お疲れさまでした、」


書記局用のノートにホワイトボードの文字を写している景吾。

上を見ては下を見、忙しく首を動かしていた。


「では、明良先生。お先に失礼します。」

『あ、お疲れさま会長。』


この時、すでに太陽は沈み、生徒会室が暗くなり始めていた。

熱心にノートに書き込む景吾を気遣い、ただ無言で電気をつけてあげた。


『(……暇だな、)』


生徒会室の鍵を閉める義務もあったため、景吾が終わるまで私は待っていなければならなかった。

しかし、暇を持て余し――


「(よし、終わった……あん?)」


私は夢の中にいた。


「寝てやがる……オイ、明良先生。」

『んー…私の……だ、いがく…い、も、』

「(大学芋?なんだそれ?)」


景吾に出会って半年が経った―その年の秋。

私をただの教師として景吾が見ていないことに気付きもしなかった。


「髪……サラサラだな、」


寝ているのを良いことに私の髪を指に絡ませて遊ぶ景吾。

そんな仕草を夢の中でちゃんと感じていた。


「……ズルいよな、」


椅子に座ったまま机に頬杖をして眠る私をゆっくり景吾が抱き上げたことに夢から目覚めた後に気づく。





第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!