[携帯モード] [URL送信]
 年下の旦那様


5年という空白の時間があるとは思わせないくらいの幸せが待っていると思っていた。

だが、

「明良、いつになったら採点終わんだよ?」

『まーだ!さっき始めたばかりなのよ?今やっと半分なの見ればわかるでしょ。』


結婚後でも家庭に仕事を持ち込むところを見ると恋人だったときとなんら変わりない。

今更、文句を言うことはできない。

成長した俺を見てもらいたいし、ここは我慢。――と言いたいところだが。


「手伝ってやるよ。そしたら早く終わるだろ?」

『平気、』

「だったら早く終わらせろよ。」

『はいはい。てか、話かけないで。間違えて採点しちゃう。』


仕事に軽くヤキモチを妬いていた。

これでは前と全く変わらない。

仕事熱心なのはいいとして、新婚夫婦らしく甘い時間を多く設けたいものだ。


「なぁ、明良?」

『……』

「明良。」

『あ!間違った!』

「……」


結婚すれば仕事と俺の優先順位が少し変わると思っていたがとんだ勘違いをしていたらしい。

明良は俺より仕事が好きらしい、なんて思い始めると悪い癖がでる。


「俺は毎日、決まった時間に帰ってきてんだぜ?」

『え?だから?』

「〜〜〜っ!」


明良と少しでも多く過ごすため、仕事を無理矢理終わらせて帰ってくる。

そんな努力をかえりみず、妻は採点を再開した。

ただ、明良と過ごせなかった5年間を取り戻そうと一人で躍起になっているようにも思える。


「俺は愛されてんのか?」


そう呟いてしまった言葉から間もなく、ペンが机に転がる音がした。

明良が手を止めたのだ。

また子供臭いことを言ってしまった、と後悔してみるが今更遅い。


『ごめん。つい、』


しかし、予想とは違った言葉に振り返り見れば、明良はばつが悪そうに俯いていた。

俺は内心さらに反省して明良を抱き寄せた。


「悪い。仕事に熱心なのは良いことだが、」

『わかってる。仕事ばかりしてたらダメだよね。景吾ヤキモチ妬きだから。』

「…わかってんならかまえ。」


明良は完全にペンを捨て、俺を抱きしめた。

あの頃より少し“俺を”理解して、俺の扱いが上手くなったみたいだな。


『ごめんね、甘えたさん。』

「……」


でも、“子供”という概念は未だ残っているのか子供をあやすように俺を扱う明良。


「子供扱いしてるだろ?」

『そんなことないけど?ただ、男の人はいくつになっても子供臭いなーって思ったけどね。』

「やっぱり子供扱いしてんじゃねぇか!」


俺は本当に明良に関して余裕がないと思う。

いつだって明良と同じ目線で物事を見させてはくれないんだから。

だが、いつまでも子供扱いしてると――


『なによ?』

「今に見てろよ。」

『?』


豹変した狼(夫)に食われるんだからな。





年下の旦那
今は妻を押し倒す3秒前。





** END **
#2008.5.5

NO.320000
真帆さまへ




あきゅろす。
無料HPエムペ!