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 ありがとう


「ん、なもん……そんなもん、」


なにかが音を立てて弾けた。

なぜこんなにも我慢していたのだろう?

なぜ欲しいものが手に入らない?

これもあの親父のせいだ。


「………明良!!」


急に全てがどうでもよくなった。

跡部?

それがなんだ。

跡継ぎ?

それがどうした。

俺には俺の道がある。


「明良!!」


俺は明良を捕まえようと滑り台を駈け上がる。

それを見た明良は慌てて滑り台から降りる。


「待て、明良!」

『やっ、』


俺から逃げられるわけもなく、明良はすぐに捕まった。

力一杯抱きしめると明良は言うまでもなく抵抗した。

しかし、そんなことで逃がすことを許すわけがない。


「明良、やっぱりダメだ!俺、明良がいねぇと!」

『だって景吾は…』

「かまわねぇ!俺自身は明良が欲しいんだよ!」

『……っ、…バ…カ、』

「俺は今でも愛してる。例えこの先、苦しむことになっても。だから――」


俺が言いかけたとき、言葉につまりながらも明良は口を開いた。


『け、ご…どこ…にも、行…かない…で。ほん…とは、すごく…好き、なの。』


涙を多くこぼしながら明良はそう言った。


『景吾…がいない、こんなせ、かつ…楽しくない…の、』

「…明良、明良!!」


二度と手放さないとこの瞬間誓った。

人を愛してなにが悪いんだ。


「来い、明良!時間がねぇ!」

『走、れないよ…』

「仕方ねぇな、」


明良を抱き上げ、宍戸の帽子と鞄を持って走った。

空港までそう遠くはない。


「おい、跡部!」

「……浩太郎さん、」

「乗れ!飛行機間にあわねぇぞ!?」


どこから現れたのか、宍戸の兄貴が車の窓を開けて車内から声をかけてきた。

話を聞けば、宍戸がこの公園から俺たち二人が出てきたら車に乗せてやれ、と言ったらしい。


どこまでもお節介なヤツだぜ。





あきゅろす。
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