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 後悔したくない


『それにしてもこの公園は懐かしいよね!』

「明良がキスを強請った場所だな。」

『またそれを言う、』


明良は頬を膨らませたがすぐに笑顔で振る舞った。

その笑顔は見慣れたものたが、どこか悲しくさせるものだった。

俺はダラダラと近状を報告する明良の話にただ耳を傾けていた。


『それでね?こないだ浩太郎と飲んだときに嫁に来ないか?だって。おかしいよね(笑)』

「ッ、」

『亮くんも今日、大事な話があるって呼び出したくせにすっぽかしてさ。』


そう笑いながら話をする明良。

気がつけば、公園の時計は俺がその場に到着した時刻から進んでフライト時間に針が迫っていた。


「明良、」

『なに?』


滑り台を駈け上がり、明良が俺を見下ろす形になった。


『…プッ、』

「あん?」

『まるでロミオとジュリエットみたい。』


洒落にならない洒落を言われ、俺は悔しくて唇を噛んだ。

ロミオとジュリエットは両思いだった。

だが、家柄のせいでその恋は成就しない。

明良はただ、この距離間のことだけを示唆して言ったとは思えなかった。


『ねぇ、もうすぐフライト時間なんじゃない?』

「……」

『終わり、だね――景吾。』


手を伸ばしても届かない。

だから諦める。

それでいいのか?

本当に手に入れたいと思えたアイツを横目に俺は家に縛られ、親父に拘束され続けるのか?


「なぁ、明良。おまえは俺のことどう思ってた?」

『…愛してたよ、』

「今は?」

『……今は――ほら?私には世話の焼ける浩太郎もいるし、学校の生徒もいるし「逃げんな!!」


夜だというのに、俺はかまわず声を上げた。

俺の声に驚いて体をビクッと震わせた明良。

悪いとは思うが、今は逃げて欲しくない。


「俺が聞きてぇのはそんな言い訳じゃねー!!」

『ッ、』


明良は顔を歪ませた。

深呼吸をしてから口を開いた。


『いってらっしゃい。』


明良の答えは最後まで変わらなかった。

失望――いや、絶望した。


「明良…おまえは、」

『なにも言うことなんかないよ!いってらっしゃい、だけ。』

「ッ、バカ…ヤロー。」


愛していた女に本当に別れを告げられたこの辛さは言葉には出来ない。

俺を急かす公園の時計。

ポケットの中で振動する携帯。










俺は本当にこの結末を受け入れなくてはいけないのだろうか?





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