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 自由をください


俺を心配した仲間が様子を見に来てくれた。


「ひでぇー…」

「ホンマ、痛そうやな。」

「仕方ねぇよ、」


俺の頬を見てジローが唇を噛んでいた。

さっきも殴られたとき、使用人が気遣って氷嚢(ひょうのう)を持ってきてくれたのだ。

冷やしてもアザと化して行く。


「おばさんもさっき会ったら顔色悪かったC。」

「そらぁ、大事な息子が殴られたりしてるん見てるねやから…」


苦笑いするも笑いにはならなかった。

ずっと黙っていた宍戸がしばらくして口を開いた。


「いつだよ。向こう行く日ってのは、」

「明後日だ。」

「何時のフライトだ?」

「日本時間21時35分のやつだ、」

「…そっか。」


宍戸はそれだけ聞くと立ち上がった。


「忍足、行くぞ、」

「え?なになに?作戦A実行する系!?」

「そのようなや?」

「?」


宍戸たちの言葉が理解できず、俺は頭に疑問符を浮かべた。


「跡部、またメールするわ。」

「ほな、跡部。またな?」

「あぁ、」


帰り際、ジローが俺に耳打ちしてから帰った。


“絶対に成功させるから!”


なにをしようというのか。

何も知らないが、ジローの言葉を頼る俺がいた――




















翌々日。

厳重に見張られる中、俺はアメリカに行く準備をしていた。

その時に宍戸たちからメールが来た。

件名がすべて“頭に叩き込んで証拠隠滅!”だったから、俺はトイレに逃げ込んでそのメールを見ることにした。


「今トイレにおるやろう?跡部の行動はバレバレや☆…なぁ、跡部?俺ら、友達として最後の最後まで尽くすから自分、諦めたらアカンからな?あ、せや。このメールを見たら削除せんと爆発するから気をつけるんやで?(笑)by忍足」

「作戦Aを実行だCー!!マジ俺たち手際よすぎじゃね?ばっちり手配済みだから安心してくれよな?by芥川」


まるで直に声を聞いているような気がした。

疑問符を浮かべざるを得ない内容は全て宍戸のメールで解消された。


「俺らは無力だからなにかしてやれるわけじゃねぇ。でも、なにかしてやりたいって思ったことを忘れんな。よく読んでからメールを削除しろよ?」


出だしがそんな内容だったから俺はしっかりと携帯を握りしめ、画面を見た。


「空港に着いたら、跡部が乗る飛行機の登場口に一番近いロビー内のトイレに向かえ。恐らく、ガードがトイレ付近までついてくるはずだ。おまえは男子便所、一番奥の個室(洋式)に入れ。俺がそこでスタンバってっから、そこで服を取り替えだ。俺がしばらく飛行場でやり過ごす。だからフライトぎりぎりまで、自由をやるよ。自由時間にお勧め場所はおまえが好きだって言って前にノロケてやがった公園だな。」


そんな宍戸のメールがなにを意味していたか、俺はまだ知らない。

俺はスケジュールを頭に叩き込み(目を通しただけで十分だが)、三人からのメールを削除した。





あきゅろす。
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