破談 次に目を覚ましたとき、両腕には針が刺さっていて、点滴をしている状態だった。 どうやら母さんが医者を呼んだらしい。 その医師の話だと俺はあのままだと衰弱死していたらしい。 俺にはそんな点滴なんかいらなかったんだ。 明良がいれば、それでよかった。 「景吾、見合いの支度はできたのか?」 「誰がするかよ、」 「景吾、この見合いを成功させなければいけない。ヘマをするな。」 親父に連れられ、見合いの席に無理矢理座らされる。 相手の女が俺を見て顔を赤らめていることも気になんかしない。 俺には明良だけだから―― 「景吾、ご挨拶なさい。」 「景吾です、よろしく。」 上辺だけの笑顔でさえ、明良以外には振りまきたくない。 無愛想に挨拶した。 「父上、俺には彼女とこの先お付き合いする気はありません。」 「景吾!」 「生涯愛すると決めた女性がおります。勝手ではありますが、この縁談はなかったことにしていただきたい。」 「バカなことを言うな!」 「俺は一言も見合いをするなんて言ってねぇんだよ!」 机を両手で叩くと、やたら部屋にバンッという音が響いた。 言うまでもない。 見合いはうまくいかず、親父は渋々この縁談を打ち切った。 そのおかげで親父の目が厳しくなった。 「そんなことで跡取りが務まると思うのか!!」 叩かれることも増え、アザも必然的に増えていった。 → |