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 頼れる友人


誰もいないはずの寝室から音なんか不気味だ、と臆病になりながら扉を開けた。

しかし、なにも恐れる必要はなかった。


『け、景吾!?』


慌てて近寄ると景吾がはベッドの上でうなされていた。

見れば額に汗を浮かべている。


『景吾!!』


揺すると青白い顔をした景吾が目をうっすらと開ける。


「……明良?」

『景吾…なんで…』

「帰っ、て……き、」


涙を流し、私に手を伸ばす景吾。

彼の手は見ただけで不健康に痩せてしまったとわかるほどだった。


『ごめ……景吾、ごめん。』


優しく抱きしめるなんて気の利いたことも出来ず、力一杯抱きしめてしまった。


「どこにも…行く、なよ。」


この言葉に返事が出来たら、私たちの涙は止まるだろうに。


『帰ってくるの…待ってたの?』

「……」

『ろくに食べてないでしょ?』

「明良と一緒じゃねぇ飯なんか食ってもうまくない、」


嬉しさを隠すため、とっさに背を向けた。

私が景吾を必要としているのと同じように、景吾も私が必要なんだと感じた。


『……とりあえず、元気にならないとね!』

「行くな!!」


台所に行こうとした私の腕を掴んで景吾はそういった。


『なにか作ってきてあげるから。』

「いらねぇよ。今は明良といたいんだ……またどこかに行っちまいそうで怖くて、」


今は景吾のそばにいることのが優先か、とため息を吐く。

大丈夫だよ、と髪を撫でながら一緒にベッドに入ってあげた。


でも気づく。

体が熱っぽいことに。


『景吾、熱っぽいよ!水分とってる!?』

「いらねー…」

『ッ、景吾。お願い、私…そんなツラい顔してる景吾見たくないの。』

「……口移しなら『バカ!』


そんな冗談言えるならまだ平気だと思った。

滲みかけた何かが一瞬で引っ込んだように感じた。

水分を飲ませたくても1週間も家を空けていたから水道水しか用意できない。

買いに行きたいけど景吾が心配だから家から出るわけにいかない。

その時、ふと思い出したのは浩太郎だった。


『……浩太郎、起きてるかな?』


不安を抱えながら携帯を開き、宍戸浩太郎の文字にカーソルを合わせる。

現在の時刻は夜中の2時。

こんな時間に電話して、もし寝ていたら申し訳けないと思いながら発信した。


「んー?」

『浩太郎、寝てたでしょ?起こしてごめんね?』

「いんや平気。で、どした?」

『景吾…うちにいたんだけど、熱あるみたいなの。ろくに食べてないみたいで…』

「アイツもバカだなー」

『それで…スポーツドリンクをいくらか買ってきてもらえない?』

「あぁ、いいぜ?」

『本当にごめんなさい。』

「気にすんな、」


浩太郎は快く引き受けてくれた。

なにからなにまで頼りっぱなしで申し訳ない。


『景吾に偉そうなこと言っといて、人に世話をかけるなんて私もまだまだ子供だな…』


私は浩太郎が来るまでリビングを少しずつ片づけながら待った。





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