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 初授業の思い出


パリパリのシャツ、スーツを着て、持ち慣れないチョークケースを持った。

教室に入れば生徒からの視線が集まった。

さらに教師として赴任校で初めて立つ教壇。

それだけで緊張していた。


『授業始めます。』

「起立、礼。」


うわずった声に従い、日直が号令をかけるとみんなが立ち上がった。

しかし……


『(……なによアイツ。立ちもしないなんて、)』


欠伸をしながら椅子に座る生徒がいた。

生意気根性を叩き直してやろうと思った。

と、いうより初授業で理想を崩され、苛立っただけだったり。


『(名前、名前――跡部景吾?)』

「あの……先生?」


眉間にしわを寄せる私を不思議そうに見つめる生徒たち。

日直の子に気づき、すぐに着席させた。

生徒が着席し、シーンと静まり返ったときに一言。


『立ちなさい、跡部くん。』

「「「!?」」」


しかし、私の一言で教室はざわついた。


「ふん、なんで俺様が立たなきゃならねぇんだよ?新米さん。」


高校一年生になめられ、大人として見過ごせなかった。

周りが蒼白な顔をしていたことなんか気にもしなかった。

私は完全にキレていた。


『誰だか知らないけど立ちなさい?』

「……跡部景吾を知らないってか?」

『跡部景吾がなに?』

「跡部財閥の息子だぜ?」

『んなこと関係ないのよっ!!』


持っていた出欠名簿で叩くとスパコーン!と良い音がした。

生徒を叩くとそれですっきりした。


「てめぇ!」

『いい?教師に刃向かうからいけないのよ。』

「大学出たての教師がなに偉そうに言いやがんだ!!」


跡部景吾がそう言うと私は口の端を上げ、勝ち誇ったような顔をしただろう。


『認めたね?君、自分で私が教師だって言った。』

「……」

『跡部様だろうと生徒は生徒。そして私は新米だろうと教師なの。覚えておきなさい?』


そう言うと跡部景吾は大人しくなったのだった。

私を見る目は完全に反抗の精神が出ていたけど。


『それと……年上には敬意を払えってお父様とお母様に教わらなかったの?跡部様?』

「…馬鹿にしやがって、」


説教を終え、教卓の方へ戻っていく私の背中を見た彼が目を光らせていたことを知る余地はなかった。


「(珍しく筋の良い教師が来やがった。)」


教師生命、第一日目にして(当時は気づいていなかったが)やからしたのだった。





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