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 1週間ぶりの帰宅


それから1週間。

景吾がどうしているか誰も知らず、行方も知わからないままだった。

私は浩太郎の家で世話になっていた。

おばさんもおじさんも亮くんも浩太郎もいろいろと気遣ってくれる。


でも、私はカレンダーを見ては卒業の日が近づいてくる恐怖心にあおられた。

景吾と本当に別れる日が近いことを恐れた。


「明良、寝ないのか?」

『……あれから1週間だよ?』

「あぁ、」

『(景吾はどこでなにをしてるの?)』


ご両親でさえ、行き先を知らないというのだから不安が募る。


『私、一度家に帰るよ。景吾がいたという証拠を隠滅しなくちゃ。ご両親に家宅捜査されたくないし、』


そう言って笑った私を浩太郎は寂しそうな顔をして頭を撫でた。


「夜なのに平気か?」

『子供じゃないもん、』

「でも女だからなぁ〜…じゃあ、おまえのマンションまで送るわ。」


夜中なのに、親切にも浩太郎は車を出してくれた。


「なんかあったら連絡しろよ?」


それだけ言って浩太郎は帰った。

いつまで、そしてどこまで私は浩太郎に甘えてるのだろうか?

私が失恋させたのに、嫌がらずに一緒にいてくれる。


『(ごめんね、浩太郎。)』


私は車が見えなくなるまで浩太郎を見送った。

あたりまえだけど、道路から私の部屋を見ると真っ暗ですごく寂しかった。

“本当に終わっちゃったんだな”

そう実感した。


部屋に景吾がいないことをはっきり知りたくないため、部屋に向かう足は重かった。


『ただいま……』


誰もいないのに癖で口を開く。

目の前に広がる真っ暗な世界、ひんやりと冷たい空気。

体を強ばらせるには十分だった。

今までその生活をしていたのに、失うって本当に怖いと思った。





電気をつけると、


『な、なにこれ!?』


部屋は荒れていた。

まるでなにかが暴れたような痕跡。


『…ひどい、』


人事のように呟いて、散乱する物を避けて歩いた。

床には食器の割れた破片も落ちている。

一つ気になったのはテーブルの上にある二つのコップ。


よく見るとひびが入っていたがそれは接着剤で止めてある。

それは二人で選んだ私と景吾のコップ。

泥棒がそんなことをするはずがないから、必然的に景吾がしてくれたんだと理解した。

今日に溢れてくる涙を堪える。


そのとき、ギシッと寝室から音がした。

私は怖い思いをしながら寝室をのぞくことにした。


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