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 真実を


「明良!やっ…と、みつ…けた!」


どれくらい探してくれてたのかわからないが、呼吸がかなり早い。

外の冷たい空気に反して吐き出される息は白く濁っていた。

景吾は乱れた髪を直すこともせず、私に抱きついた。


「明良、なに…してんだよ、こんなとこで、」

『………景吾?やっぱり、別れよう?』


昼間の話から一変した私の言葉を聞いて景吾は目を見開いた。


「な、んでだよ?昼間と話がちが……」


泣いている私を見て景吾は言葉を詰まらせた。


『お願い、私のことを思うなら別れて!』

「急にどうしたんだよ!?」

『どうせ景吾に話してもわからないよ。』

「なんだそれ、」


頭に来たのか私の両腕を痛いくらい握ると荒い口調で言う。


「話せ、なにがあったか!」

『言えない!言えないよ!』

「そんなんで別れられるわけねぇだろ!」


なにも言えなかった。

跡部財閥は世界三大企業のうちの一つを占めている。

その企業の妨げとなるなら……


「明良、愛してるだろ?」

『……ッ、だいたい初めからうまくいくはずがなかったの。私とあなた、違いすぎる。』

「なにがだよ?」

『忘れても仕方がないよね。でも景吾が言ったことだよ。』


そう聞いて彼は疑問符を浮かべていた。
俺を誰だと思ってる。

跡部財閥の息子、跡部景吾だぜ?



今、この時に景吾を手放さないと私はいつまでも別れを惜しんでしまう。


『離してっ!』

「理由を聞かなけりゃ放せねぇよ!」

『……私、これ以上嘘はつけない!私、浩太郎にずっと浮気してた!!』

「……バカ、誰が信じるかよ。」


とっさに思いついた嘘も景吾にはお見通しなわけね。

でもこれ以上の嘘は見つからなかった。

納得してくれるまで、私は帰れない。


『証拠があればいい?』


そうとだけ言って、浩太郎に電話をかけた。


『そりゃあ、景吾と付き合えたら楽しいだろうし、幸せかもしれないけど…私には浩太郎が合うの、』

「信じねぇからな。」


数回コール音が鳴ると電話に浩太郎が出た。


『もしもし?浩太郎?』

「おぉ、どうしたー?」

『すぐに○○公園までこれない?会いたいの、』

「……なんかあったのか?」

『景吾ってば、私が浩太郎に浮気してること信じてくれないから別れてくれないの。』

「もしかして、今日の授業のことか?」

『わかってるなら早く来て?』

「たく、おまえもバカだよな。嘘ついたって仕方ねぇのに。でも今から行くわ、」

『ありがとう、』


電話を切ると景吾がいつもより低い声で言う。


「結婚してくれるんじゃなかったのかよ?」

『子供の遊びに付き合うのはこれまでなの、』

「遊びだと?」

『やっぱり景吾とは吊り合わない。そう感じたの。』


景吾は私を見て、嘘をついていると気付いたのだろう。


「明良、鞄よこせ!」

『なにするの!?』

「いいから!!」


無理矢理奪われた鞄からは携帯や書類、口紅やマスカラなどの化粧品が散らばり落ちた。


「そういうことか、」

『ちょ、やめて!』


気が付いたときには遅かった。

自宅謹慎を言い渡されたときに校長から渡された書類を奪われた。


『景吾!』

「明良、本当のこと言いやがれ!!」


真実を語れと迫られてしまったのだ。





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