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 すれ違い


景吾は私を好きになってくれたからその気持ちに応えてあげたいと思ったのが始まりだった。


「明良!」

『!』

「危ねぇー…」


今となっては自宅にはいつも景吾が入り浸りでプライベートもあったもんじゃない。


「手、切れちまうところだったぜ?なに考えてた?」

『ちょっとね。』

「ふーん?他の男のことか?」

『違うからぁ!』

「ならいいけどな、」


仕事をしていても料理をしていても今日は本当にミスばかりする。

早く寝た方が良さそうだ。

しかし、資料を作らなければいけないからそう簡単にはいかないのが大人。

食後、明日の授業の準備をしていると地べたに座る私の膝に頭を乗せる景吾は私を見上げて言った。


「かまえ、」

『仕事してるの、』

「チッ、暇なんだよ。」

『今忙しいの、』

「はぁ……」


わざとらしくため息を吐くと景吾は私の足を撫でる。

今度は叱りつけると立ち上がった。


『(しょうがないじゃん。明日の準備があるし、)』


しばらくすると背に重みを感じた。

言うまでもなく景吾が抱きついてるんだろうけど……


『今度は何?』

「つまんねえ、」

『だから、明日の「寂しい、」


景吾の口からそれが出たときはあまりに可哀想になるのだ。


『悪いけどこれ仕上げないと…』


作りかけのプリントを見せると景吾は無言で私から離れてソファに横たわる。


『(可哀想だけど……また手抜きプリントなったり自習になりたくないし、)』


景吾のせいで体力を使い果たして手抜きプリントになるか、景吾の相手をしてからプリントを作ったせいで睡眠不足になり、まともに授業が出来ずに自習になるかのどちらかなのだ。

しばらく黙々とプリントを作り上げていたけどやっぱり景吾が気になって顔をのぞき込む。


「……」

『まだ怒ってるの?』

「明良?」

『なに?』

「おまえ、俺を愛してるか?」


体を起こし、ジッと私を真面目な顔で見つめてくる。


『うん、愛してるよ?』


いきなり言われて唖然としながら答えると一瞬、顔を歪ませ景吾がキレた。


「――帰る、」

『え?ちょ、なに!?待ってよ、景吾!』


彼はいきなり立ち上がると部屋を出ていってしまった。


『なんで!?なにかした!?』


考えても考えても景吾が怒る理由が理解できなかった。


『プリントもう出来るのに、』


そう呟いて今まで景吾が寝てたソファに触れば、まだ温もりがあって切なくなった。





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